国内でのレディオヘッドの評価

【レディオヘッド新作『A Moon Shaped Pool』リリース】
CD盤は2016年6月17(水)日本先行発売、サマソニ2016出演も

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■国内でのレディオヘッドの評価

RADIOHEADの新作『A Moon Shaped Pool』は日本のiTunesチャートで発売以降総合1位をキープし、国内での人気、そして注目度と作品に対する評価を非常にわかりやすい形で物語っている。現在ではCDセールスやヒットチャート、ライブ動員、SNSでの注目度など、音楽作品においての評価の指標は細分化し「一体どれが指標やステータスとしての“基準”であるか」が不透明な時代のように思える。

ツイッターやフェイスブックなどに代表されるSNSのコミュニティでは爆発的な支持を得るもセールスはイマイチだったり、ライブこそは常にフル・キャパシティがステータスのバンドも存在する。そんな中、レディオヘッドはあらゆる“指標”で全世界に常に注目され、常に高い評価を得ているという点でやはり“化物バンド”と称するに大袈裟ではないであろう。

またレディオヘッドは「ミュージシャンズ・ミュージシャン」という所があり、彼らにリスペクトを寄せるアーティストは数多く存在する。「歴史的バンド」という点ではもはやビートルズ級かもしれない。

国内では、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉、サカナクション、L’Arc-en-Ciel、椎名林檎、レミオロメン、ストレイテナー、らなど他にも数々のアーティストがレディオヘッドに影響を受けたとされている。(ちなみに、THE YELLOW MONKEYの吉井和哉と菊地英昭はレディオヘッド3rdアルバム『OK Computer』日本盤のライナーノーツを執筆している)

日本のロックミュージックシーンのここ15年ほどのサウンド傾向には、ギターの突っ込み方やエレクトロサウンドのアプローチ法やビートの構築など「レディオヘッドに影響を受けた」と感じられるサウンドが“どこかで匂う”ものを低くない頻度で耳にする事ができる。

また、日本の風土がレディオヘッドの祖国イギリスと近いせいか、その情叙的で精神性の深いサウンドや歌詞は共感しやすいのかもしれない。極端に言うと、底抜けに明るくラテンな血が騒ぐアプローチよりも、どちらかといえば湿っぽい、インサイドで文学的な空気感の方が日本人には適合しやすいのかという点を考慮してみたりすると、文化面と風土の関連性はとても興味深く感じられ、どうしても国内でのレディオヘッド評価が高い事と繫げたくなってしまう。



■RADIOHEADメンバー略歴

レディオヘッドはイギリスの5人組バンド。1985年結成の前身バンド「On A Friday」を経て、1991年より「radiohead」として活動。オルタナティブロックやエレクトロニカなどの音楽を軸に様々な手法、楽器、音のアウトプット法をもって斬新な作品を発表し続けている。

メンバーはトム・ヨーク(ボーカル / ギター / ピアノ) —ジョニー・グリーンウッド(ギター / シンセサイザー )—エド・オブライエン(ギター) —コリン・グリーンウッド(ベース) —フィル・セルウェイ(ドラム)(パートは担当メイン楽器。各メンバーは他にも多種の楽器を演奏)らで構成され、メンバーはデビュー以来現在まで不動だ。

絶望的な美しさのファルセットボーカルと容赦ない轟音ギター、そしてあまりにも淡々としたビートが衝撃的なデビューシングル「Creep」がアメリカで着火し、2ndアルバム『The Bends』が世界的評価を得て以来、3rdアルバム『OK Computer』はロックシーンでの不動の存在感を知らしめ、大傑作の4th『KID A』は“2000年代ベストアルバム”と各メディアが評価した。

ギターロック、オルタナティブロック、エレクトロニカ、ダンスミュージック、ダブ、アンビエントと大胆に各音楽のエッセンスを取り入れ、自身の音楽性を常に更新し続け、紛れもなくロック史の最前線で浮遊するように鎮座するレディオヘッド。彼らは毎回異なるアプローチで新作を発表し、完成された手法をいともたやすく切り捨て、一つのパターンを追随する事なく、常に新たな音楽性を追求し「完成された形」として具現化している。

“実験的”という感じのアバンギャルドな音像の作品が多い中、その全てが“終着点”という形の楽曲に仕上げ「次回作」への期待は常に裏切らない。いや、毎回裏切られているのだが、ことレディオヘッドに関しては「裏切り」の色が予想外に毎度異なる。

「90年代以降、RADIOHEADを超えるバンドは出現していない」「『KID A』を超えるアルバムがいまだ発表されていない」とも言わしめたレディオヘッド。世界中の音楽ファンが待ち望んだであろう9枚目の新作『A Moon Shaped Pool』は、これまでの同バンドのユニークなリリースアプローチを踏襲し、SNSなどインターネット上での大胆不適な煽りを経てジワジワとリリースに至ったようだ。

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