ここだけ毎日更新。仕事と制作をサボらない為の戒めが目的の日報ページ。5月。
「絶対嘘つくんですよね」。と、俺は精神科医に臨床においてのその事実を確かめた。それは、控えろと言われても実は呑んでるアルコール摂取量多めの患者の態度のことである。
それは典型的であると俺は知っていた。情報源は漫画とか小説とかのノンフィクションのやつ。だから、あえて医師に聞いてみた。
「酒呑みは医者に、実際より呑んでないと言うんですよね。きっと」。と、俺。情報源も晒しつつポップに言及した。主治医はわりと無邪気に笑みつつ、一拍おいて肯定した。
「平吉さん。私はね、糖尿病患者も見てるんですけど――」
「はあ」
「アルコールもそうですが、自己申告よりもやはり、どこかで呑んだり甘いの食べたりと。ふふっ」
「ですよね。俺、漫画とかで見ましたもん」
「――平吉さんの前回の血液検査の結果ね」
「体調最悪の日に採血したやつ……見るの嫌なんですよ今回は俺」
「肝臓の値と中性脂肪が」
「ほらあ……!」
アルコール依存症病棟というのだろうか。そういう施設で勤務していた経験がある先生は酒にとっても厳しい。
「だから言ったじゃないですか。あの日に『採血は次の月でいいですか?』と!」
「平吉さん。数値はやや高いです。でもね、そんな気にしないでいいですよ」
と、実弾をエアガンに感じるほどの提言だった。とはいえ、肝臓の数値は確かに、正常値よりも少し高め。その前の検査では正常値。行ったり来たりである。だからだろうか。今日は、咎められなかった。
「先生。俺は嘘をつきませんよ。その採血の月ね、普段の日は〝一日二缶まで〟を死守してましたが、たまに外で呑み散らかしていたのです」
「ふふ」
「数字って正直ですね先生」
「ええ。肝臓の値と中性脂肪。この〝セット〟はアルコールと――」
「正直に、その結果が反映されると」
「でもね平吉さん。そんな気にしないでいいですよ」
やはり寛容。なぜだ。とも思ったが、医師の言葉はプラセボ以上の魔力がある。だから俺は今、ビールを呑みながらこれを書いている。
「あと風邪気味でして――」
「咳止めですか? はい。出しておきましょうね。5日ぶんでいいですか」
「助かります。あと、質問が」
俺は、この2週間実施しては確かな効果を得ている〝肩甲骨回し〟の医学的根拠を掘ろうとした。
「――騙されたと思いましてね。うさん臭いとは思いつつも、YouTube動画のエクササイズを実施したところ絶好調になりまして。今日は風邪気味ですが」
「そうですか。効いてるならいいんじゃないですか?」
「その、先生のようなプロのエビデンスが欲しくて。なんでも、肩甲骨周りには、なんちゃらとかいう細胞が密集していて――」
実のところ確実に記憶している細胞名称の呼称をぼやかしてプロを試した。
「ああ、『褐色脂肪細胞』ですね」
「たぶんそれです」
「平吉さんね、医師や整体師はそれを勧めませんよ。なんでかと言うと――」
「ゲホ!」
「知見的にそれを推奨することで――」
「ゲホ!」
「でも効果が得られるならよかったじゃないですか。その肩回しが平吉さんに合ってるんじゃないですかね?」
「ゲホ! 先生。咳止めを」
「はい。5日ぶんでいいですかね」
「助かります」
「まあ、YouTubeはサムネで釣りますからね」
効果のエビデンスは得た。しかし精神科医の口からその俗な言い回しが出ると真顔をどうしていいか俺にはよくわからなかった。
――風邪気味の根拠を確かめるべく、いつもの薬局で検温を懇願。結果「36.8℃」。微熱である。いつもの薬剤師・Nさんが来た。風邪気味を開陳すると乗ってきた。
「黄砂が飛んでるっていうじゃないですか〜」と、N女史はどうやら軽微な体調不良のもようを俺に伝える。
「らしいですね。鼻水ですか。俺もです。こう、喉がイガイガするところから始まり――」
「そうなんですよね」
話していると、どうやらN女史の症状は俺とほぼ同一。――そういう風邪が流行っているのかなと、俺は「お大事に」と、彼女に伝え、一拍置いてN女史と受付嬢は「お大事に」と、俺にユニゾンの挨拶を寄せた。
――帰ってさっさと寝よう。今日は風邪だ風邪。仕事はクリニックに行くまで5時間くらいちゃんとした。それで今日は上等。寝よう。仮眠だ。その後、軽く呑んで寝よう。
と、思ったがどうも書き進めている小説を止めたくなかった。俺と、物語の主人公が代わる代わる原稿に言語を重ねていくような不思議な感覚を得た。――書き手が拮抗するから速度が鈍る。だが、それがなんか功を成した。という変な章が書けた。「このあと、この小説どうなるんだ?」感がものすごい。プロットあるのに。
という一日。嘘のない一日。しかし、主体が、風邪と創作との狭間で不思議な感覚を得たのは個人的収穫として善処。
N女史お大事に。先生いつもありがとうございます。
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