ここだけ毎日更新。仕事と制作をサボらない為の戒めが目的の日報ページ。4月。
女の匂いがすさまじく右手から。今日は何をしていた?――すさまじく何もしていない。デバイスを無視したが階段でコケた。――無事でよかったね?――財布が雨に濡れた、くらい。
肉を食ったの?――たまにはいいじゃないか。――覚えてる?――いいえ。ただね、その場で喜んでSNSにね、喜んで何が面白い。投稿した。――〝いいね〟?――〝よくない〟。おいしかった?――訳のわからない休日でありました。――それでいいの?――しゃっくりがとまりません。――ベンゾジアゼピン?――やめろ。――アルコールと?――やめろ。――しゃっくり止まった?――膣のようだよ。
二日。なんもしてない。強いて言うならば――何かの記憶が苛まれては横に、右に晒しては「ふうん」と思った。
今ですか。少々、呑んでいる。閾下レベルで。そこに何の意味が?――いや、若干つらくてねえ。――辛いとは?――騙してるんだよ。――何を?――お前をな。――敬語ってわかる?――日本語のジャンルだよ。――僕は君に敬意を全くもって払っていない。――殺すぞ。――何でかわかる?――ううむ。――成り立たないことをどうするか。君は永遠にそれを考えては〝右〟とか言っては悶絶。――殺すぞ。――いいよ。――実に困る。――「どうして?」――君がいないと俺は――「俺」は?――殺すぞ。
人が死ぬとしよう。それは真っ当である。しかし人は死にたくはない。しかし真っ当に確実と向かう。
連想。その営みはあまりにも死に向かう最短ルート。だからこそ俺は今日、右からいっては匂いがすごい。〝生〟のやつ。それを殺したい。
――今日は、なんなら昨日も何もしていなかった。原稿? 書いていない。ギター? ああ、ストラトキャスターのいいやつあるな。フェンダーの1980年製のやつな。触れていない。仕事? 1秒もしていない。〝右〟? 意味がわかっていないがそれ。それが〝停止〟を意味した。
仕事が乾きだとしよう。休みは、濡れることなのではないだろうか。
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おぞましい文章を垂れ流したな。と、昨日の酩酊文をながめては汗も出てこない。削除レベルの表現多々あるも、そう捉えられたら実に困る。という表記も多々あるもそのまま。〝恥〟をそのまま置いておく。と、何を律しているのかもはや俺にはわからない。
――〝堕落〟は社会の拒絶を意味する。
だから今日は仕事をした。実務時間レベルで8時間はやった。よし。しっかり1時間休憩というか仮眠をした。堕落? いや、必要な〝休息〟である。
ここ数日の音楽業の経理面を追った。楽曲公開先のプラットフォームの巨大化により、そうとしか理由は見当たらないのだがとにかく収益率が跳ね上がっている。
「たまたまだろ」と、思い三週間はその動向を追ってはAIを使用して分析。「KPIがどうの」と、AIは俺の言動にそう言及した。そのレベルでいいんだよ。重要業績評価指標がどうの、と。
しっかりしたストック収益の源泉。嬉しい。ただ、何もせずに収益が入ってくるのも何だか申し訳ない。だからもっと楽曲をつくろう。という気概はめきめきと衣服を貫きストラトキャスターを手にした。真空管アンプを「かち」「かち」と、電源とスタンバイスイッチを倒すようにONにしてブゥゥゥゥン……と、空気を揺らす。
最近、小説が創作のリソースの中心であった。先日、勝負作を『文藝賞』にエントリーした。健闘を祈る。それしかもうないフェーズ。「次を書け」――プロットは既にある。第三作目は実験作。中長編の予定。その前に、音楽をつくろう。世間に貢献しよう。受動的にも能動的にもみることができるユーザーの声がすごく嬉しいんだ。
――ギターを弾いた。ビリー・アイリッシュのアルペジオを奏でた。深く沈む改定まで何かを探究するかのような和音の連なり。呼吸のいらない遠泳のよう。
カーディガンズのメロディを弾いた。ラズベリーの菓子をほおばりながらスウェーデンの街を歩く。そんな女性の素朴な表情が見えた。
自分の楽曲をいくつも弾いた。「よくつくったな」と、俺の曲に関してはそれくらいの感想。
スティービー・ワンダーの楽曲を弾いた。「Overjoyed」(1985年)。鍵盤で弾ける。ギターでも弾ける。はずだった。忘れている。ごめん。と思い、常に2つ置いている譜面立ての片側にあるスティービーのピアノ楽譜。それを参照。すぐに思い出す。天才が味わった不遇の時代を抜けた名盤に収録されているこの楽曲。大好きな曲だ。雰囲気だ。メロディ。歌、転調するところで涙が出せる。
ギター練習のリハビリのような時間を経て0時。ちょうどいいかな今日は。と、思ってアンプを「かち」「かち」と、消灯させた。
――小説に関しては俺は全くマネタイズできていない。しかし音楽は、長年の執念からそれができている。発表する大きな場がある。そこに居させてもらえている。聴いてくださる、使用してくださる、ありがたいユーザーがいらっしゃる。
だから、おざなりにしないこと。「こいつの次の曲が聴きたい」と、思っていらっしゃる方が居るとしたら神、と、率直に、変に捻った表現・語彙を出そうとせずとも感謝と神、という表現で間違っていないと思う。
つまり今日は真面目に過ごした。生産的でいないと俺は速攻で堕落する。そして社会との接点を怪訝にみる。その懐疑心は俺をどこまでも腐らせる。そういう時期が長かった。だからもう、そんな、ひとりぼっちで沈殿することはない。
小説はまだだが、仕事の文章で社会と接点がある。収益もある。音楽もそうである。地固めできている方をしっかり営みつつ、文学に挑戦し続ける。
その限りは、〝Overjoyed = 大喜びした〟人生だったと思えるだろう。だから――文章の仕事をしながら、音楽をつくり、たまにコンサルとかもやり、文学で更に跳ねる。そこに邪な心はなく、ただただ純粋で居られる。
楽曲のストック収益がしっかり目にある。リアルタイムで文章で稼ぐ。小説で稿料をいただけるようになる。印税が入る。まずは、現時点の営みからそこまで行きたいよね。
その次は何をするの?――少なくとも〝堕落〟からは遥か遠くに行くだろうね。――いいと思うよ。――昨日は殺すとか連呼してごめん。どうかしてた。――知ってるよ。――おこってる?――別に。まだ、殺気が残ってたんだなってくらいしか。――そう。
ここの文章のほとんどは、だいたいの日は、係りの者経由で書いている。
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今日は気が進まない。今日は気が進まない。と、呪文のように連呼してメンタルクリニックへ。行くのはいい。採血がある。それが実に困る。
数日前の酩酊の蛮行。ここひと月の過活動。恒常的な寝不足。風邪まで引いて声が歪んでいる。血圧も高い。このコンディションでの採血など地獄の構図。どう考えても人生最悪の数値を叩き出すことは明白。だから、気が進まない。
「平吉さ〜ん」
「いやです。今日は」
などとは言えず、診察室へ。何とかして「採決を回避する話の持っていき方」を俺はロビーで全力でイメージしては架空の台本を左脳に叩き込んだ。
「――という訳でして先生。気力・精神力が漲り過ぎましてね。この一ヶ月。身体がガタガタですよ」
「確かに声がしゃがれて――平吉さん、風邪薬出しておきましょうか?」
「そんなものあるんですか?」
「ええ。咳が出るでしょう? だから気管の拡張を促し、痰を――」
「それはください」
「あと今日は――」と、採血を切り出す先生。俺は台本通りいった。今日は気が進まない旨を明確に伝えるために。
「――ですので、風邪はひくわ寝不足が続くわ過活動だわ三日前に呑み過ぎたわ血圧をマツキヨで測れば見たこともない数字だわで。いま採血すると、すさまじい数値となることは明白なのです」
つまり次回にしてくれ。と、俺は懇願ベースで提言した。しかし先生はニコニコと。「そういうね、わるい状態の時も測っておくことが大事ですよ?」だとよ。
「いやその、気が進まないんですよ今日は。わざわざ、わるい数値になるのがほぼ確でわかってて採血する。そこに何の意味が――」
「じゃあ、あちらで準備してますから。ニコニコ」
だめか。サディスティクにも思えたその顔よ。わかりましたよと俺は観念して採血部屋へ。いつもの看護師のお姉さんが待ち構えてはニヤニヤとしていた。
「――今日はね。自信がないのです俺は」
「なに〜! ブロコリースプラウト食べてるっていうてたやん!」
いつからお前関西弁になった。とも思ったが「いやね、昨日もスプラウトをうどんにかけて食べましたけどねえ」
「はい。腕を出して」
「採血自体は好きなんですけど今日は気が進まないですよ。血圧だって――」
「たまたま数日そういうのが続くことはよくありますよ?」
「はあ、先生もそうね、実に軽〜く言ってましたわ」
「ぶす」
「うん。血を抜かれることは好きなんですがねえ」
「動かないで!」
「おこらないで」
1ミリ以下ほどの針と2ミリほどの管を経由し、俺の血が注射針へ登っていく。その景色が異様に好きなのはちょっと説明がつかない。
「おや」
「どうしました平吉さん?」
「いや、なんか色がいい気がして」
「そうですよ〜そんな調子が良くないからって気にし過ぎですよ〜」
俺の血はまるでスペイン産のテンプラニーリョ種の若い赤ワインの如し色彩。やや安堵してはその血にエールを送った。
「結果、知りたくないですわ」
「大丈夫ですって〜」
「来月、なんなら来ねえかも」――とまでは言わなかったが、俺の懸念を1ミリほどしか受け止めてくれない医療従事者各人のあのタフネスよ。なんか怖かった。
もうこんな地味な懸念は御免だ。そう思い、いつもの薬局に行き、本を読んで待っていた。
「平吉さ〜ん」
「は」
「あら。ずいぶんブ厚い本を読んでらっしゃるのね」
人の気も知らずにいつもの薬剤師・Nさん今日も元気。
「ああこれですか。いいですよ。半分以上何言ってるかわからない学術書でして。こういうの読んでね、まるで著者と一緒に考えるような感じになるのが好きなんですわ」
「まあ。私は活字があまり――ふふ」
「そうですか。いいと思いますよ別に」
「読書感想文って学生の頃書くじゃないですか? あれがもうねえ……!」
「はは。読まないと書けませんからね。腹をくくって妄想で感想文、そう。創作にすればいいんじゃないですかねえ」
「ふふ」
などといつものように無駄に長尺の世間話をして帰る。採血の結果をまじで見たくない知りたくないと心配な気持ちで買い物をして帰る。
あれだ。休もう。と思い、仮眠をとる。仕事は今日は既に5時間はやった。今日はいいよ。十分だよ。まいったよ。気の進まないことを完遂されたよ。そのほうがいいのかもしれないね――エレクトロミュージックを聴きながら寝た。
90分。すげえ寝たな。と思い、まだ時間あるなとPCに向かっては音楽業の数字の推移を確認する。伸びっぱなしのその収益率にやる気が漲る。これだ。この、休んでいればいい時間に漲って色々やるから血が、血圧が、喉が、風邪が――DAWを開けた。
エレクトロミュージックの種のスケッチをプレイバックした。いけそうだな、と思い俺はローズピアノの音色で鍵盤を叩いた。すごく自然だけど実は死ぬほどトリッキーな和音進行がほぼフルサイズ出来てきた。
嬉しくなって楽譜に起こした。一枚やぶった。何という雑な転調だ。やりなおし。また書いた。もう一枚やぶった。おかしいな? こうかな――おや。素敵だ。血が騒いだ。この感覚が「いける」明瞭なサイン。80小節書いた楽譜は採用。嬉しい。これはきっとユーザー受けする類の楽曲テイストだ。
――などと思って25時。これだよ。血を弱らせるも血が騒ぐという訳のわからない現象に直結する原因は。
――小説を書いててもそうだ。体が休みを求めているのに気概がそれを麻痺させて時間が歪曲する。生産性としてはいいことじゃないか。でも、その結果、実態として血の数値がどうなるか。
――自覚症状は?――ないよ。スッキリしてるよむしろ。――ご飯食べた?――ネギタワータンメン食べた。――主治医は心配してた?――なんか面白がってたようにしか見えなかった。――それが〝客観〟だよ。――じゃあ俺は勝手に心配になってるの?――いい曲できそうなんでしょ?――でもいまは疲れたよ。――〝逸脱〟はしていないでしょ?――確かに。
言われてみれば体調はなんか良くなってきた。気の進まない採血の結果、「なんだ先生! ひどいコンディションの時でもこの程度ですか!」「言ったじゃないですか平吉さん」――と、来月互いに談笑できることを祈る。
健康第一最優先。だが、没頭と表現するその営みの時間が重なると、体のコンディションが。
「――没頭、過集中でしょうね。そういう時、止まらないんですか?」と、先生。「はい」と、俺。どれくらいの程度かなどの詳細もよく話した。笑む先生。医師がそう判断するなら。じゃあ、いいのか。気にしないでおこう。さっきのローズピアノの美しくも懐っこい音色が耳から離れない。じゃあ、いいんだ。
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無理をしていることに無自覚。そこに気付いた。120分仮眠した。
宵の口、楽曲制作をしたかったが優先順位に気付いた。仕事部屋をアンビエント音楽で揺らし、しばらく微睡んだ。
ふと半覚醒し、文章を書くイメージが湧いた。まるで不整合だった。自分の状態を把握した。普段の半分くらいのIQ感覚で浮かんだそれは、現状不要と見なした。
曲をどう磨くかと、イメージが湧いた。しかし、身体を撫でるアンビエント音楽が覚醒の芽を正確に捉えては冷酷に律するように、それを溶かした。
AIとの壁打ちが想起されるも即座に蒸発した。事故のような音が聴こえた。それは音響の中低域ノイズだった。安心して和声を探った。だが脳が放棄した。
起きて、鏡を見ると眼は焔色だった。角膜はやけに輝いていた。頭痛の質が変化していた。
ここに入っていま、0時になった。そこでPCを閉じる。そういう日々が恒常だった。だが近頃はそうではなくオーバーヒートした頭が延々と執拗にタスクを進めていた。
それが1年以上は続いた。それは体の悲鳴のシャットアウトに盲目ともなる。そこに今日、気が付いた。
静謐なはずの夜も喧騒に手を抜かない界隈。人間はそうはいかないのだろうか。バイタルサインが交わり奏でる均衡を逸すると、自覚の調律が総じて危ぶまれる。その揺らぎの看破に必要な凪。本当にそこに居ると、誰の声も脳からは聴こえてはこない。それを健全と言うのであろうか。
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つらかった訳じゃないけど、酒を呑むと何でこんなに楽になるんだろうね? と、感想と問いの合の子を投げたところ、ほぼ酒を呑まない彼は公家顔をほころばせ「知らねえよ」と、返されては互いに笑んだ。仕事後に一杯賜ったひとときのこと。
そこから宅に戻ってタスクはしない。今日の夜と明日全部は休息が適切なタスク。そう断じ、出先でいただいたものと同一のビールを飲みながらPCに向かった。リラックスをしよう。だが、気付けば小説の第三作目の構想を練っていた。既にあるプロットを吟味した。
「文学や小説で一番やってはいけないことは〝説明し過ぎること〟と〝先に言ってしまうこと〟である」
などと何かで参照した。そうかな? 俺が好きな小説で、そのへんしこたまやってる作品はわりとある。でも、俺が書くにあたっては参考になる提言ですね。くらいに思った。
どうしても書いて完成させなければ気が済まない作品。という指針でも何でもない精神論に落ち着いた。
公募に送るか、編集者なりに渡す次作として扱うか、他のアプローチをとるか、弾倉とするか。そんなもの書いてから考えろ。と、プロットの末尾に書いてWordファイルを閉じ、もう一本ビールを開けた。
オーバーヒートしておかしなことになり、体調がファズギターサウンドくらい豊かな倍音を含む悲鳴を発した。だが、まだ23時台であることは理性が壊れていないその証左。で、あって欲しい。
仕事部屋において今日も、脳には誰の声も聴こえてこない。いや、位相を変えれば聴こえるがその声の主、係りの者は、昨日から静かだ。それに従う。だから、あとはダイエーで買ってきた廉価の「あん肝ポン酢」を食べてゆっくり呑んで寝よう。
抑制力でも超自我でもなく閃光を声にするインターフェースでもなく、向こうとこっちを往復した感想と問いの合の子を言語化するような声。
それが今日も沈黙。ということは、過不足以上逸脱未満で酒を呑んで、自身を棚卸して臨界点まで寝るのが吉。だろうか。
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休日。本籍地の東京都板橋区高島平団地で死ぬかと思って駅へ向かう。道中、いつもの立ち飲み屋があった。「一杯呑んでからでいいしねえ」と、思った。
入ると「プロデューサーですよね」。という物腰の御仁が視覚に入った。彼は「話しかけていい人物」の空気感。そこから小一時間意気投合。
何の拍子か、後ろに位置する女史たちが固まるテーブルからお誘いを受けた。こっち来なよと。だからと俺は素直に喜んでは制された。「こっち来ます?」「はい行きます」と、秒で制された。
そこでギャンブルが始まった。女史方は3名。年齢不詳。俺の歳をきいてきた。これは〝勝負〟だと俺はいたずらに思った。
「じゃあすけど――俺の年齢ピンポイントで当てたら1万円。ス……これを皆様に。しかし全員外れたら俺に一杯づつ」などという、いかついルールを提言した。女史たちは賑わった。
――結果、勝った。そこからその天国テーブルで生の喜びを5時間ほど賜わった。乱入する外国人。おっちゃん。令和の若鳩。――「連絡先交換しませんか?」――「不文律でねえ。交換しても次は二度とないですよ?」と、言うけれども共々LINE。これを不慣れな手つきで交換。案外、今もチャットのラリーが続くほっこり感よ。
だがしかしそんなもの自主転落のように逸する可能性は高き。高島平団地の柵が物語る。
でもね、5時間の休息はそういった香ばしい死の匂いをしばらく横に。今に至る。今日はまじでなんもしてない。姫テーブルへの謎の誘いと「僕もレディオヘッド好きだよ!」という外国人と令和の若鳩との壁打ち目的LINE交換やら。
好きな日だった。働かない日の美学は体調をあまりにも優しく纏った。
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本籍地である東京都板橋区高島平団地で逸するようなことを仄めかし、ふいと寄った酒場で異文化呑みに耽っては女史たちと戯れ浮かれて汚ねえ顔。クソじぇねえか。
と、昨日の休日を振り返っては空に煙を吐き、無かったことにした。
それは同じ堕落を繰り返す芽。だからきちんと反省。――反省? はい。変な遊びを初対面の女史たちにふっかけてはほぼほぼタダ呑みなんて下劣な行為。二度としません。――楽しかったでしょ?――はい仰る通り。ただ、今朝方は世間を地獄見るようにして仕事をしておりました。――ちゃんとやったの?
陽が傾くその後。そこまでは血中濃度が自覚するほど酷い澱。だが夜に、仕事をして夜に、「俺の内臓の回復力は卓越している」などと素で思うほど鋭気を取り戻す。DAWを開いた。
ローズピアノの温かみ。普遍的和音進行の並び。都度転調。7セクション全て転調するという離れ業の構成。だが自然に耳に溶け込む工夫。これに時間をかけた。92小節、楽譜に音を記して楽曲サイズが確定。土台さえできてしまえば、後は半ばオートメーションのように無意識がサウンドメイクを牽引する。脳を意図的に使う工程を過ぎた。それが嬉しかった。
こういう日を数日繰り返そう。きちんと合間に休憩をとろう。実のところしつこく身体を侵していた風邪が治った。測っていないが爆上がりしていた血圧も恒常値という肌感覚。――後日、小説の三作目に取り掛かろう。そうやって、健やかに営もう。
――たまにバカになるよね。――はい。昨日のように、でしょうか?――うん。側から見たら漫画みたいな絵だったよ?――ええ。テーブルを囲み俺、女史3名、レディオヘッドが大好きなオーストラリア人(40)。店長もハイボール飲みながら俺を「哲学ニキ」と呼称。笑むおっちゃん。21歳の令和の超絶イケメン若鳩。――よく話が噛み合ったね?――はい。カタコト英単語とリアクションでなんとかなるんですよ。外国人は。女史方は楽しそうでした。若鳩は「LINE交換しましょうよ」って、嬉しいですね。若者にそう言っていただけるのは。女史にもね。――下心……。無いですよ本当に。ああいうのはその場限りというのが経験則でして。
今日。好きな日だった。働く日、創造する日の営みは、身心を浄化するようにあまりにも優しく纏っていた。
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つとめて神妙に前日の見上げた生活態度をトレースする。朝起きて、イチジクをかじり、たいが、そんなもの無いからヨーグルトを食べ、サプリメントを雑に飲む。仕事をしては金を引き寄せ社会と関わり、宅で寝る。60分。DAWを開いてローズピアノをパフォォォォ……と、叩き鳴らす。
〝バグ〟を大事に。今後の音楽に必要なのは人間特有のバグ。ノイズ。揺らぎ。情動。チャンオペ。チャンス・オペレーション。失敗。それらの昇華と〝どこまでそれを認めるか〟にかかっている。そこに命がけで俺はローズピアノをブファォォ……と、叩き鳴らす。失敗しても死んだりしないから大丈夫。
――さすがにズレすぎじゃねえか。と、本録音したトラックをプレイバックする。不問。そこにさらにトラックを重ねる。バグが混入した部分を認めぬ失敗と見なすか、味と捉えるか。――AI不介入の人間のセンスというやつだろうか。いや、しくじってるな。――という部分は自身に謝罪するような気持ちで録り直す。
優しくも重厚な低音域が脈拍に干渉しては体に良い。そんなキックの四つ打ちとローズピアノ。単純なループフレーズを微妙に変化させ続けては楽曲7セクションを縫い走る。それらを重ねて聴く。ズレてねえか。と、感じる。明らかに感じるが、後の録音トラックをイメージする。
「強烈に裏拍を操作してベースを生で弾く」「頭拍のバグはアコースティックギターの白玉ストロークで滲ませる」「メロディを薄く入れてズレの意識をグルーヴと感じさせる」「エレクトリックギターのディレイの揺らぎ、こだまのズレを接着剤の役割とする」「シェイカーを踊って振って生録音。リズムのズレとは聴こえないよう拍を律する」。
これだ。これを全部やれば、超正確な打ち込みのリズムでは絶対に出ない〝恍惚となるグルーヴ〟が生じる。例えるならばストローで缶酒を飲み続けては明け方に鳥のさえずりがフェイドアウトして気絶するまでの刹那の多幸感。あれはもう二度とやらない。そういう、生身の鼓動を期待した絵図を頭に描く。
するとすさまじい時間になっている。26時が近い。つとめて神妙に前日の見上げた生活態度のトレースならず。創作は時に生活をもズラす。そういうものだと思ってるけど、俺が下手なだけであることはここ数十年で証明されている。
――明日、またDAWを開き。「ズレとかバグの味ではなくやりなおし」ということは多々ある。でも、一旦その時その瞬間の拍の脈流を記録して後日確認。そのあまりにも非効率的な制作でやっていけるのか。
とも思うが、そのタイムラインでの制作工程の成果物でしか、そのやり方しか、俺には武器が無いのだろうか。そもそもそれを武器と呼ぶのが適切なのだろうか。
それは明日、判明する。その繰り返し。――いっかい試しに、AI使ってつくってみたら?――それもいいかもね。――遅かれ早かれ〝取り入れる〟段階までは必ず行くでしょ?――俺もそう思う。――じゃあすぐやればいいのに。――今は、バグを楽しむことに真剣になること。――それが何なの?――AI黎明期にせっかく生きているのにそれをやらないと大切なことを失う。――おおげさじゃない?――本当にそう思う?――いいや。確かめたの。――俺だってAIやらMIDIやらメインでススっとサクッとつくりたいよ。――どうしてそれをしないの?――すると何かが違うから。
と、声がユニゾンした現状の帰結。
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