ここだけ毎日更新。ツイートばりの短文日記。
ヌーノ・ベッテンコート味。7月。
先月はどうも調子がグラつくことが多かったきらいがあった。しかし7月になったとたんにどうだろう。本日は梅雨全開の気候にも関わらずすこぶる良好で体が軽い。 興行リハーサルで都内某所へ。
みなさまとせっせと頑張ったのち、大量の肉を喰らいに行く。ごちそうになる。ニコニコとしながら怒涛の勢いで空いた皿を重ねる。実にわんぱくな光景であった。
夜は手前の宅でメンバーの一人とコーヒーをすすりながら和む。LINE通話越しにもう一名の方を交えてのクロストークに耽る。気がつけば24時。
なんやかんやと終日、人と一緒に過ごした1日。ハリがあってよかろうもと、今日はぐっすり眠れるだろうといった心境。
“一人で「あああぁ!」と金切り声を発するもだれも突っ込んでくれない侘しさといったら喩えようがなかった――”と、記した先月の1日とは対照的であった7月の第一日。
_07/01
梅雨が本気を出してきたので湿度は常に70〜80%を推移。実に蒸し暑い季節。日本の“四季”というカテゴリーから除外されているこの季節はなくていいんじゃないかと思うが生態系を鑑みると必須。仕方ねえなと思い洗濯物にドライヤーをゴォォとあてがう。
お腹にやさしいたまご豆腐スープを作って食ってストラトキャスターを弾いて、ボンゴレなんちゃらパスタ弁当を買ってきてすすってアコースティックギターを録音してと、興行練習に制作という宅での過ごし方。
親戚が投身自殺するという嘔吐しそうな悪夢を見たが、だいたい人が死ぬ夢は現実でなにかしら良いことがある予兆とも聞いたことがある。きっと、これから良いことがあるのであろう。
そういった感じでほのぼの平和に過ごす。夏を、これからの未来を、楽しく景気良く過ごすために足を溜める。梅雨空に似つかわしいストックタイム的な1日。
_07/02
リモート案件やらで宅で1日を過ごす。わりとなにかといそいそとしていたような所もありつつ、隙間時間もあったのでその間は動画を撮ったりして遊んだりしている。
若干、晴れ間も出たので明日もこのような気候だといいなと思う公演の前日。頼むから明日は雨は降って欲しくないところ。万全で臨むため、今日あたりは早めにスヤスヤと眠ろう。
_07/03
けしからん程度の早朝に入眠。
そうでもないかなというほど酔いどれる4時。午前。
みんなと楽しげに宅で過ごす3時。
男子が集い「互いの価値観たるや」を語る2時。
みんなの「おこだわり」を聞いてまわる1時。
今日をねぎらい合う0時。
自由すぎるインターネット生配信で賑わう23時ごろまで。
めしをがつがつと喰う22時まで。
よっしゃ。やったったぜ。と、はける21時前。
オラー! と猛ぶるみなさんのバイブスがビンビン。20時。
個人的には、梅雨所以でお腹の調子が優れんとか言いつつ太田胃散を飲んで散らす19時。
うんうん……! といった所感もあった1公演後の17時。
よっしゃ、と思う1公演目の空気感が引き継いだのは18時あたりまで。
それまでの時間はというと、出発前、卵スープをこさえてすする11時。「よし。今日は公演だ。さあ、頑張ろうぜ」と、声に出す。
時系列は遡る感じだが、そういったわけで現在に至る。とても幸せなパラダイス・ロスト公演の1日。
今は、ギタリストのよしおさんが俺に買い与いてくれたシュワシュワすると話題のビール缶を呑んではやれやれとか思いつつ楽しかった本日を反芻。
_07/04
はいはいわかってましたよと言わんばかりの当然の如き二日酔い。
しかし今日は前から決めていた「お休み」の日である。各タスクには影響を及ぼさない。PCでの作業などはメールチェックと帳簿付け等のみに留め、ささっとメシを食べてはフカッとソファで呆け、夜の散歩などをする。
湿った空気の匂いが昨年の同季節の記憶を馳せ巡らせる。季節の変わり目特有の精神状態でややヘロヘロな気分に追い込みをかけてくるようである。
とはいえ、散歩しているとだいたいスッキリしてくるものだなと思いつつ、赤羽駅直近のスクランブル交差点に差しかかる。そのあたりに所在する大型書店で『働かないふたり』という、昨年あたりからハマりだした漫画の新刊を2冊購入。とうとう連載リアルタイムにほぼ追いついたと思われる。ついに現行の全巻が揃った。
メシの素材を買って帰宅。辛いラーメンを作って食って発汗。またちょっとソファでクタァと転がったのち、昨夜のパラダイスロスト公演の配信映像を客観的視点で観て省みる。うんうん、みなさん楽しそうだとほっこりする。
今日あたりはどれだけぶりかに、ギターを1音たりとも弾いていない。しっかりと長く音楽を続けるためには、こういう労わりの日も必須であろう。ようやく酒が抜けてきた深夜。
みなさまと楽しく過ごすひと時はまこと清福。なんだかんだでこのくらいの年頃になっても「オラー!」とか言いながら音楽をしながらたくさんの人様方と交わえる幸甚。
とはいえ、昨夜の打ち上げは皆で合唱をするなどという熱気あふれる生配信含みだったので、さすがにご近所様からのクレームを恐れていたが問題はなかったもよう。ヨディーさんもホリさんも、よしおさんも足立くんも、たいへん愉しそうでよかった。
_07/05
宅で延々と制作をする。それ以外は何も、という1日。
張り替えたばかりでもうサビようとしているギターの弦を見つめては、湿気全開のこの季節はここまでのものだったかと思う。
エアコンを入れている部屋以外は学校のプールの更衣室のような空気感。高校三年生の頃、体育の水泳の授業のサボりすぎで9月下旬の気候下でプールに叩き込まれた地獄補習が懐かしい。
はやくスカッとした高気圧の夏がこないかと切に願う。弦代がバカにならない梅雨のピーク。
_07/06
メインギターのストラトキャスターを腕の確かなリペアマンに見てもらう。手前では完璧な調整だと思っていたが、プロ中のプロに見てもらうといきなりネックのトラスロッド(かなりシビアな部分)をグイと回されておののく。色々と施して頂いた後の仕上がりたるや十分。
そのまま同行の友人と1日を過ごす。肉を食ったりドライブしながらコーヒーを飲んだりしてずっと会話しつつと、実にリラックスした空気感。「俺ら今日、所ジョージさんみたいな1日過ごしてんな」という友人のセリフそのまんまのフィーリングである。
夜は宅でさらにコーヒーを飲みつつ何やかんやと喋って過ごす。友人とのリラックスした時間というのはやはり貴重。当たり前に思うがかなり貴重。友人の少ない俺からしたらもっと貴重である。
深夜は一人で制作をする。依頼の件を1曲仕上げる予定だったが、「もっといける感」が残るので明日に持ち越す。そういう場合もある。こと制作において、「とりあえず形になってるからいいか」という及第点でよしとするのは手前はまこと関心しない。
外に出るとちょこんと茶トラの影が。すっかり気を許してくれた近所の飼いネコをモフる。1カ月はかかった粘り強いアプローチが功をなしたのである。昨日今日と、もはや「よう夜行性。チッチッチッ……」と、言うだけでネコは甘えた声を発しながら寄ってきて足元をグイグイ擦ってくる。実にチョロい。
そういった感じの、所さん的なフィーリングのほっこり愉しげな1日。実際に所ジョージさんがどのように日々を過ごしているのかは存じ上げないが。
_07/07
確実に徳川埋蔵金が埋まっていると確信し、執拗に地面を掘り続けているに違いないだろう。というほど長引く近隣の爆音工事。
ドリルンベースをスピーカーフルテンで鳴らされている程の狂気じみた轟音と振動が俺を物理的に揺さぶる午前。どう考えても寝られないほどの騒音につき、3時間弱睡眠で覚醒。今年イチのおかんむりの気分で起床。
埋蔵金のため、あるいは帝愛グループあたりの地下強制労働施設の開発中だろうか、それではしかたないと、そのように強引に気分を落ち着かせつつ葉っぱとセロリとパプリカを小刻みにし、オリーブオイルとポン酢をドレッシングしてモリモリ食べる。
それにしても頭にきたので工事のハイデジベルに負けないくらいの音量を出しながら制作をする。夕方になると今日の工程は終わったもようで辺りは静かになる。暫くして、俺もまた制作の依頼がひとつ仕上がる。こう、勝った気分である。
寝なさすぎで逆に覇気が漲ってはいたが、冷やしラーメンを夜食べてソファでウィ〜ンとハンドマッサージ器に左手を当てがって休憩していたら当然の入眠。なんならそのまま翌朝まで本気寝してもよかったが、早起きしたぶん時間をもっと使いたかったので小一時間で起きて公演曲目の練習をして深夜を迎える。
あの容赦なき騒音で近所のネコたちがおののき、別の地へ散ってしまったら寂しい。そう思いながら物件の階段を降りると安定の茶トラが俺を見つめる。その物腰と表情たるや通常運転そのものである。
畜生ですら工事の爆音などものともしない様子なのに俺はというと。そう考えながら反省しつつネコ科の本能的たくましさを見習う。とはいえ数日は睡眠不足が続いているので早く埋蔵金が見つかって静かになりますように。
_07/08
相変わらずの騒音が続くが近頃の睡眠時間絶対数が足りなすぎ起因で昼まで眠りこける。起きがけは、たまご豆腐スープを作ってすする。これがいつ食べてもやさしくおいしい味わい。
明るいうちは近隣工事の容赦なき爆音に引けをとらないほどの重低音および大音量でベースの録音をする。手前で楽曲を作る際、ビートの組み立てとベースの録音はとても好きな工程につきルンルンと作業をする。
夜になってメシを食い、ソファで憩っていると「懐かし病」の発作が起きる。造語ではあるが、概念としては、急に昔の楽しかったことや辛かったことなどが頭でフィードバックし、メランコリックな気分に包まれ、ぼーっとする、というもの。
「それにより、日常生活や社会生活に支障をきたす」わけではないので、厳密には病でもなんでもないが、季節の変わり目にとてもよく起きるこの発作。俺だけだろうか。
「ああ、昔付き合っていたあの娘は元気だろうか」とか『CR新世紀エヴァンゲリオン~使徒、再び~』のパチンコ台の確変中のお祭り気分は堪らなかった」など、色々な記憶が感情とセットで蘇るのである。この発作は、15歳の秋に初めて体験した。その後、定期的に起きる。
条件としては、一人の時。そして、特筆して何かに没頭していないタイミング。気候の変動が多い時期。という3点が大きい。
なんでも、昔のことを思い出したり語り合ったりすることで精神安定が期待できる「回想法」というものがあるという。これはアメリカの精神科医が唱えたもので、「懐かしい」という感情が湧き出ると、脳が活性化したりもするという。
そうなってくると「懐かし病」は、別になにかしらのダメージがあるものでもないどころか良い発作ではないか、まあどうでもいいか、とか思いつつ、数時間ギターの練習をする。
そういった感じで、昨日と似たり寄ったりの1日ではあるが、精神状態はまるで違うというあたり、人間はいつだって見えないなにかの意思におちょくられているような、試されているような、液体のようなフワッとした感覚。
そんな気分にキッチリ白黒つけるためにハレの快感を、いけない刺激を求め、よせばいいことに手を出したい欲が出る。しかし、実行はしない。
その場合に、そういった気分を補完するために自然発生するのが「懐かし病」であるというペラッペラの仮説。とはいえ、個人的には「それは、人間の精神を均衡に保つために内発する心のグルーミング的な発作だよ」と、賢い学者あたりに言われたら納得してしまうかもしれない。しかし明確に共有できるエビデンスは、ない。
_07/09
明日、誕生日を迎えるやや歳上の友人が、野暮用で宅に来る予定。
俺はシンプルに、“同属性”と解釈している彼を喜ばせたいと思った。そして、誕生日プレゼントでも買い与えればいいんじゃないかという無償の愛所以のアイディアが飛び出た。
酒呑みが対象だった場合、同性への誕生日プレゼントの選択肢第一位はやはり酒。それも、ふだんはヒョイと買わぬであろうちょっといいボトルを吟味しに、駅ビルやデパートをまわるであろう。相手の好みも加味して真剣に選ぶであろう。しかし彼は、酒をあまりやらない。
じゃあどうしようと考えた場合、なかなかに難しい。タバコ数箱、あるいはワンカートン、という手もある。でもどこか心がこもっていないというか、「選んだ感」が薄い。
だんだんめんどくせえなという感情になりつつ、手前の食料の買い出しで寄った小洒落た輸入品メインのお店でブツを決めた。「食い物なら問答無用で嬉しいのでは」と。
確か彼が刺激物系の味が好きだったことを思い出し、そこらでは売っていない上にけっこう美味しい韓国ラーメン各種数点をカゴに入れる。辛すぎたらキツかろうと思い、珍しいフルーツジュース数点も追加する。
これならOKと思い、紙袋に入れてそれっぽくする。とはいえ、「誕生日プレゼントがメシかよ」とか思われるかもしれないが、まあそれはそれで一興。
懇意の異性へのプレゼントのために真剣にジュエリーショップで選び抜き、彼女が箱を開けた時の表情をガン見したい欲がなぜか湧き出る深夜。26時。決して、虚しいわけではない。
_07/10
照ったり湿ったりとわけのわからない天気。明日からはまたしても緊急事態宣言発令で今度は酒出し自粛要請と、これまたわけがわからない。
夜、来訪した友人から「平吉さんはヌーノ・ベッテンコート味があります」と、さらにわけのわからないことを面と向かって言われる。
「ヌーノ・ベッテンコートというと、あのエクストリームのギタリストの?」
「そうです。なんか、似てるというかヌーノ味があります」
ネットで検索エンジンに「ヌーノ・ベッテンコート」と叩き画像検索すると、なんだかわかる気がしてきた。
「ね? あるでしょ平吉さん。ヌーノ味」
「あるというかなんというか……」
人様に「誰某に似ている」と言われ、「手前でもそう思う」という基準がある。それは、その対象の顔写真やらを見たときに、えも言えぬ変な気持ちになるかどうかという1点である。ヌーノ・ベッテンコートさんに関しては、確かに変な気持ちになったからそうなのかもしれない。
伊藤英明さんに似ていると言われたことが複数回あり、やはりネットで顔を見たら変な気持ちになった。初対面の若者や、かつての同僚女性に「尾崎豊さんになんか似てます」と言われたこともあり、同様のことをしたときも同じ気持ちになった。
伊藤さんも尾崎さんも男前および男気十分の好漢であるが故、「似ている」と言われるのはたいへん光栄かつ、嬉しみがある。ヌーノさんもまた、凄腕ギタリストであり、なかなかの面構えなので、率直に嬉しい。
しかし、人によっては、よかれと思って「誰某に似ていますね」と言っても、逆にご立腹となる場合もある。理由は、「その人と比べられているようでよい気分はしない」という要素があるらしい。
いろんな捉え方があるのだなと思う反面、俺あたりは単純に、好漢に似ていると言われれば率直に喜ぶ。「ピエール瀧さんに似ている」と言われた時は変な気持ちというか、「そうかな?」と、思ったが。
そんなくだりを話しつつまったりトークをし、友人に誕生日プレゼントの食料を渡したら普通に喜んでいた。「ヌーノ・ベッテンコート味がある」と言ってくれて俺は嬉しみ、彼には贈与して喜んでもらう。ほほえましいやりとりである。
ちなみに彼は、香取慎吾さんと、堂本剛さんと、若い頃の鳥肌実さんをミックスしたような顔をしているが、それは言わんでおいた。実はイケメンなのに自覚のない友人。お誕生日おめでとうございます。
_07/11
警視庁赤羽警察署に出頭する。今日は演目練習に制作という予定の日だが、何より先に、俺はまず出頭した。気合いを入れて柄の激しいシャツを着て徒歩で署へ向かった。
道中、咲ききったような姿をしている紫陽花を見ては「それそろ梅雨も潮時か……」と、娑婆での空気を肌で感じる。
別に悪さをして自首をしにおめおめと署に行ったというわけではなく、3カ月前に届けた拾得物の件でホクホクとした心境で、引換え用紙的な書類を持って現金を迎えに行ったのである。
「お巡りさん。この件なのですが」
「はい。身分証はありますか……はい、座ってお待ちください」
俺は妙齢の婦警の方に対応して頂き、待ち時間は北区の水門のパンフレットを熟読しては興奮していた。旧岩淵水門の垂涎の造形たるや写真で見てもたまらない。
「ええ……平吉さん? 残念ながら……」
「はあ。(残念ながら? くれないの?)」
「はい。せっかく届けて頂いたのですが、残念ながら、落とし主は現れませんでした」
「残念。実に残念ですね。落とした方の気持ちを考えるとこう、胸が……では……」
「はい。1万円ですね。この度はありがとうございました!」
「しゃあ。やったぜ!」
「あら。ふふふ」
ということで、3カ月前に道端で拾って交番に届けた現金1万円は公的な手続きを経て俺のモノとなった。そのまま1万円札を裸で握りしめながら、近場のニトリへ行き、キッチンの食器を置く水切り的なやつを新品でドンと購入した。ずっと買い換えたかったのである。
それでもあと7,000円弱は残っている。本当に何に使ってもよい超あぶく銭である。帰路、酒のディスカウントショップに寄って、たまには高価なドライジンでも買ってやろうかと思ったがボトルを宅に置いておくと呑みすぎるのは明白なので寸止め。やりきった感が出てきた紫陽花を眺めながら帰宅。
聖人君子であればこの金は募金やらに回すのかもしれない。しかし俺はその清き発想が出る前に速攻で手前の買い物をし、残りは財布に忍ばせてニヤニヤとしていた。
たまにはこういったひょんな僥倖があって手前のために使ってもバチは当たらんだろうとか思いつつアコースティックギターの弦を張り替える。
すると、どこをどう探しても「3弦」だけが入っていない。15歳あたりからギターを弾き始め、何100回、もしかしたら千回以上は弦を張り替えてきたが、「買ったギターの弦セットで1本不足」という不備に出くわしたことは生まれて初めてである。
俺はふざけんなとか口にしながら近所の島村楽器店に行って同様の品を買う。ここでその欠損品を買っていた場合は烈火のごときテンションで激しい柄シャツ姿で店員に怒号を浴びせるであろうが、買った欠損弦はネット経由での別店舗での購入であった。
いや、さすがに店員さんに文句を言ったりはしないであろう。6本入りの弦セットで1本入れ忘れという不手際を引くのは、現金1万円拾う確率くらいであろうということで手打ちとする。
とはいえちょっと悔しいのでメーカーさんの「お客様相談センター」のネットページから一応メールを送る。文面は以下の通りである。
“――を、先日購入したところ、通常は6弦全て入っているはずなのですが、3弦(G弦)のみが欠品しておりました。 とても素晴らしい製品で愛用させて頂いている弦です。しかし、新品購入の弦セットで一つ足りないとたいへん困惑してしまいます。何卒、御対応のほどお願い申し上げます。 この弦は半年以上愛用させて頂いております。素敵な製品をありがとうございます。”
希望としては、「3弦(G弦)」1本だけでもいいから送ってほしいところだが、「ついてなかったですね」くらいの対応だった場合、さすがに本気でメーカー本社にフライデー襲撃事件規模の気合をもってしてカチコミに行く計画を立てる。
というようなことはまずしないだろうが、話のネタになるだろうから「ついてなかったですね」という返信のみで一方的にクロージングさせられた方が面白そうである。
_07/12
今日は夜まで断水の日とお知らせがきていたので前日に対策を打っていた。風呂には潤沢に貯水をし、ヤカンには歯磨き用とコーヒー用の水を目一杯水を溜めておいたのである。
しかし、起床して一応蛇口をグイと捻ってみたら水がガンガン出る。ポスト投函と廊下の張り紙と、大家さんからの二段構えの入念なあの告知は一体何だったのであろう。
これはどういう了見だとも思ったが、出るにこしたことはないと思いシャワーを浴びる。しかし、このバスタブに溜めておいた水がもったいない。では水風呂で気合いを、と思い入ってみるがひゃっこ過ぎて即ギブ。足と手だけ冷やして仕舞いとする。
いつもと変わったことといえばそれくらいという1日。採譜や練習や制作などをして過ごす。ギターの弾きすぎで指先が変な色になってきたが、これはアコースティックギターの弦特有の成分の色が付着しただけなので問題はない。
手を水で洗って綺麗にして、ゆっくりシャワーを浴びて疲れをとって寝よう。水がちゃんと出るありがたさ。
_07/13
振り返ってみると1日の活動時間なか1/3くらいは電話をしていたという珍しい日。人様と喋るのは好きだからよいのだが。あとの時間はリモート案件で原稿を一つ書き、公演練習を2時間ほどする。
最近ギターの弾きすぎで左手の疲労がかなりのものだったから、むしろ丁度よかったであろうという配分の過ごし方。
もしかしたら、周囲の方々からの「ちょっと今日は休んどけ」という、目に見えないエネルギーがはたらいたて、みんなが休ませてくれたのかもしれない。
そのように半ば本気で思うほど、最近YouTubeチャンネルのおすすめ動画に出てくるのはスピリチュアル関連のものが多い。
そういったこともあり、スピリチュアル方面に長けた友人が欲しい。スピリチュアル・マッチング・アプリ的なものはないだろうかと想像したが、それを利用した時点でなんだかスピリチュアルからかけ離れる気がしてきたので探す行為はしなかった。
フワッとしてるが核心をついているようなことに傾倒しつつあるアラフォーど真ん中。そろそろまた一つ歳を重ねる。意外と、誕生日は何をして過ごそうかという発想は一応残っているわりと元気な壮年期。
_07/14
断水の告知は2日前だったが、その日、水は出た。そして、告知日ではない本日、全くもって水が出ないという悶絶の遅延断水に見舞われる。
さすがにシャワーは無理である。しかし、どうやって歯磨きを、どうやって寝癖を正せばよいと試行錯誤した結果、冷蔵庫常備のミネラル・ウォーターで口をすすぎ、頭にもブッかけるという背徳感すら生じる朝の準備。コーヒーもミネラル・ウォーターで作るというこの贅沢さ。味はというと、あまり変わらん気がする。
断水の日程が全然違ったという事実。これはさすがにケジメをつけてもらう必要があると思い、管理会社へ連絡する。
とはいえ、俺はこの物件において、集合住宅で絶対に出してはならないほどの音量で制作や談笑などをしているのでことは穏便に済ませたい。
「いつもお世話になっております。お忙しい中たいへん恐縮ですが、あのですね、なぜかですね、一昨日のはずだった断水が今日になってですね……」
「確認しましたところ、工事の関係で今日になったもようです!」
「さようでございますか。お水の方は、いつから出ますでしょうかね……?」
「終日、かと思われますので20時までかと!」
そして20時すぎ、蛇口を捻るもレスポンスはゼロであった。24時になっても同様。今日はシャワーで体を清めることができないことが確定した。
やりどころのない無力感を引っさげ、近場のネットカフェのシャワーだけサービスを利用するために外出。階段を降りると、いつもの茶トラがこちらを見つめてあくびをひとつして近づいてくる。
「君はいいよね。ペロペロと毛づくろいをしてシャワー要らずだ」
「ニャー」
「俺はそうもいかんから、ちょっとあそこでシャワー浴びてくるね」
「ニャァァ」
500円で30分、アメニティーが充実している施設のシャワーを浴び、ちょっとした小旅行気分を味わい、SEIYUで酒買って帰宅。茶トラはまだ路上で佇んでいた。
もはや彼の方から寄ってくるほどの距離感と信頼感を得ているので遠慮なくモフる。もうグイグイと俺の身体に頭を擦り付けてくるレベルまでいったわけである。恋人同士で例えたら、デートの時は指を絡ませるスタイルの手の繋ぎ方がデフォルトになった段階あたりだろうか。
しばらくすると、なぜか3日に1度くらいの頻度で目にする近所の妖精のような雰囲気のとっつぁんが、謎の台車をガラガラと引きながら我々に近づいてくる。
「おや、懐いていますなあ」
「ええ。この子は最初はとても警戒心が強いのですが、今やこの通りでして」
「おうおう……あっちにも居てね。撒いて回っているのよ」
「ごはんを、ですか。とにかくこの子の場合は1カ月は距離をはかりつつ……」
「おいほら。カラカラ……(エサを一握り撒く)」
「ビクッ!」
「ね? 最初は警戒心が凄いんですよ」
「本当だねえ。ほら、おい! 人がせっかく……!」
「ははは。1カ月は見た方がいいです。この子は簡単には落ちませんよ……ニヤ」
そういった感じで彼の相手は今夜のところはとっつぁんに引き継いだが、ネコをモフッた手すら満足に洗えない状況であることを忘れていた。やはりミネラル・ウォーターで手洗いをする。
そこでふと、蛇口を捻ってみたらジャアアと普通に水が出たのであった。
というオチを期待していたがやはり水道は一滴たりも水を供給してはくれんかった。
明日の朝になっても水が出なかった暁には管理会社にカチコミに、いや、やはり穏便に懇願するしかない。「明日こそ水が出ますように」とかいう原始的な願いを胸に寝るというのも一興と思い込む。しかない。
_07/15
どう考えても梅雨明けであろうという日照り。湿度が下がるだけでもこんなに違うかというくらい実に気分のよい起きがけ、水はというと普通にジャバジャバ出た。
悶絶のゲリラ断水も過ぎたこと、なかったことにしておこうとネガティブな思考は殺し、案件で原宿へ。久しぶりの出向である。
俺の大好きな、アンビエントやノイズ系の音楽性のアーティストの方とお話をする。会うまではなんとなく気難しい人なのではと思っていたが、話してみるとたいへんきさくかつポップで会話が楽しい。おみやにステッカーまでもらってほっこりする。
天気も気候もよいと腹の調子も優れるものだと、帰り際は油全開の天丼を平らげて満足。一杯500円。
梅雨明け起因か、まあまあやる気を出してきたガールズバーの呼び込みの娘たちをササと交わしつつ帰宅。原稿や練習に励む。雨は止み、水は出てくるというくっきり爽やかな夏の始まりの良日。
_07/16
原稿書きにリモート案件がひとつ、楽器練習と、宅で粛々と過ごすわけだが、昨夜のことがどうも気になる。
深夜、酒を買いに行こうとエコバッグをぶらさげて外に出ると、いつもの茶トラネコがゴミ捨て場にズドドと突進するハッスルな光景を目にした。
夜行性である彼が元気に過ごしているのでなによりと思い「よう」と声をかけると、数秒、興奮を抑える尺を挟みつつ近寄ってくる。
よしよしと、首のあたりをモフるわけだがどうもいつもと様子が違う。飼いネコの証である首輪をしていないのである。これは一大事だと思い、俺は問いただした。
「おいおい。まさか捨てられたのか」
「ニャァァ」
確かに、彼が捨てられてしまう要素を挙げるとしたら、俺の主観ではあるがいくつか思い当たるフシがある。
深夜は定期的に近所を徘徊するという素行の悪さ。もしかしたらよそでもごはんをもらっているのではないかという疑惑。飼い主からしたら、それらは悪行そのものなのかもしれない。
「――ちゃん。またごはん食べないわね! どこかでエサをもらってるんでしょ!」
「ニャア」
「また外に出てこんなに足を汚して帰ってきて! もうウチの子じゃありません!」
「ニャア……」
という経緯で昨晩に至るのかもしれないと想像し、そうであった前提で俺はさらに問いただした。
「バレたのか。悪行の数々が」
「ニャァァ。グイ」
彼は頭を擦り付けてきて、いつもよりも2割り増しくらいの訴求力がある振る舞いを見せる。
「いつもの首輪をしてないとなると、捨てられたか、首輪の洗濯中か、夏だから暑かろうと一時的に外してもらっているか……」
「ニャ。ガブ」
「肘を噛むんじゃない。甘噛みだからいいけど」
「ガブブブ……」
「だんだん力を強めるんじゃない。痛いて。そういうところだぞきっと」
「ニャァァ!」
なんだかいつもより興奮気味である。ガチで捨てられて途方に暮れている確率はゼロではない。何より、普段よりもテンションは高めで、若干のヤケクソ感と悲壮感が混じり合った空気を発しているのである。
「君、そうだとしたら野良でやっていけるのか?」
「ニャー」
「もしかしたら、安定の生活に飽きてしまい、本能に従い野に出る。という自主性も混じっているのかもしれないけど、飼いネコからいきなり野良は厳しいと思うぞ。個人的には。もうちょい段階を経てだな……」
「ニャー。ガブ」
「噛むなて。とりあえず、仮に、本当に捨てられたとしても、俺が飼うというのは期待せんでくれよ」
「ニャァァ」
「その器量なら、野良が厳しかったら、営業して回れば誰かがすぐ飼ってくれるだろうも。純正アメリカン・ショートヘアーでホワッツ・マイケルそっくりな捨てネコなんてレア過ぎる」
「ウニャ」
「とりあえず当面のシノギとして、こないだの妖精のようなとっつぁんが定期的にエサを撒きに来るわけだから、その時間帯を把握して食いっぱぐれないようにだな……」
「ゴロゴロ」
「そうやって人をおちょくるように地面をのたうちまわっているうちは安心なのだが……あと、保健所にはマジで気をつけた方がいいよ」
「ニャッ」
いつもの時間帯に彼に会うたびに、だんだん体は痩せこけてきて、ガリガリになってきて、それでも「ニャア……」と、か細い声で鳴きながら俺をじっと見つめるようになったらどうしようと想像してしまう。
それくらい、いつも見かける飼いネコの首輪が急になくなった問題は深刻。彼の毛艶と体に変化がない日が続けば、首輪はせずともまだ飼われていると判断できる。それを祈るばかりである。
単独行動を好むネコが、三下り半を突きつけられ野に放たれ、手前自身の器量で生き抜く状況と相成る。それは険しい道かもしれないが、俺は全力で応援したい。とはいえ家までついてこられたらなかなか困るのでメシの類はもちろんあげない。
なんとなくだが、彼は野良よりも飼いネコのままで、たまに深夜に徘徊するのが許容されているライフスタイルの方が幸せだと思うので、どうか、なんらかの理由で首輪を一時的に外されただけであることを願うばかり。
_07/17
今日も昨日と同じような時間軸と内容の1日だなとか思いながらタンクトップで過ごす。
早いところ飲食店20時まで営業縛りというシーズンが終わってはくれんかと、そう呟きながら牛丼屋でテイクアウトのニンニクの芽牛丼をオーダーしてキッチンで食う。これが実にスパイシーでおいしい。
夜はギター録音依頼の件をやるわけだが、どうもイメージに近づいているようなもうちょいのようなと難航。手前の曲だったら自由にやるわけだが、他者様がコンポーザーの場合はそうもいかないので丁寧に取り組む。いつの世も、作曲者の意図を読み取るというのは音楽においてまこと重要なものなのだなと改めて思う。
なんにせよ、宅で一人で作業していて、原稿でも興行練習でも制作でも、毎日コツコツやればちょっとずつは進むわけだからよしとする。最終的に仕上がればそれでよしとする。
先月あたりは地味ながらもけっこう色んな出来事があったひと月だったが、今月はとにかくコツコツな時期だなとか思っていたらもう下旬に差しかかっている。そろそろまた歳を重ねる。
「どんどん死に近づいている」という感覚と、「さあこれからだ」というアンビバレンスな感覚が混じる、一般的には人の寿命のだいたい半分くらいの時期。
「もう半分しかないのか」と思うか、「あと半分もあるのか」と思うか、よくある精神状態の測り方。俺あたりはもう3周くらいしてネガティブ期は抜けた気がするのですっかり後者派。
_07/18
暑くもいい感じに湿度が下がり非常に過ごしやすい初夏。起きてまず蕎麦屋に行ってガブガブ蕎麦湯を飲む。滋養が確かに沁み渡る最強の飲み物。
原稿を書いて提出し、あとの時間は興行曲の練習や電話での打ち合わせなど、そういった日常的な1日。
夏の始まりはそれだけで気分がよいなと、一人で宅で静かに過ごしていてもそう実感する。
この間、仲間内で「BBQに行こうぜ案」が出たが、是非行ってみたいものである。一生に一度でいいから、SSNに「BBQ最高」という、焼きあがった肉を食らいつく画角の写真付き投稿をしてみたいものである。
クルーザーで沖に出て、イカを一本釣りしてその場でイカソーメンにしてすするという『美味しんぼ』的なこともしてみたい。
もっと近場で、プールに行って延々と平泳ぎをしては身体中を活性化するのもいいかもしれない。
こんな感じで、俺は毎年のように夏がくると「これがしたい」と書き綴るもほぼしないという癖がある。今年こそは。
_07/19
無駄に美容によさそうなモロヘイヤスープを作って食って定期検診へ行く。先月はだいぶ調子が優れなかった旨を先生に詳細と共に伝えると、まあ、大丈夫だろうというご判断。
よかったよかったと思い帰宅。しばらくすると友人経由でいかつくクールなギターアンプが届く。めちゃめちゃ重い。
事前に「鳴らしてよいよ」という確認を取っていたので俺は喜んでギターケーブルを挿して弾き倒す。やはり、エレクトリックギターはDAW経由でのサウンド出力よりもギターアンプ直結で弾く方が気持ちがよい。
そんな感じで楽しく過ごしていた1日なのだが、非日常的な出来事が、メンタルクリニックの帰りにあった。
けっこうな出来事だったので、それについての詳細を書きたいところだが、俺は最近常々思う。個人のブログとはいえ、人様が関わることについてどこまで書いて許されるのかと。
かなり印象的な出来事というか事件というか、インパクトのあることだったので記録したいのだが、こう、手が止まる。そういう時は、ちょっとでも悩む時は、やめとくべきであろう。別に誰かが検閲しているわけでもないのだが。
そういったわけで、日常と非日常と新鮮な嬉しみがあったとてもカラフルな1日。
_07/20
新たな歳の初日、はりきって都内某所へリハーサルに赴く。照りつく陽は容赦無く、キラキラと輝いている。夏生まれの俺を祝福しているように感ずるのは気のせいかもしれない。
現地でメンバーさま方と会うと、祝いの言葉や品をくれたりと、たいへん温かい愛所以の振る舞いで接してくださる。
「これは今日あたりは少々演奏をミスっても許される日かもしれん」とも思ったがそれは別問題。真面目にやる。
リハ後はメンバー数名とめしの時間を共有する。「バースデーだからおごるよ」という僥倖を遠慮なく賜り、ステーキを450グラムほどペロリとたいらげる。
アラフォー、中年、壮年、色んな言い方のあるミドルエイジの今、血肉となるボリューミーな食事をごちそうになるのは有難い限りである。
目につくところに手前の誕生日を表示したり、「今日は誕生日です!」とSNSなどで投稿するのはむしろ自然の行為となった現代ではあるが、俺はなんかそういうのは苦手というか控えめにしたいというか、でも、祝ってもらいたい気持ちはわりとあるので、知っている方が当日に、様々なかたちで祝いの気持ちをプレゼントしてくれることはすこぶる幸福を感じられ、嬉れションを禁じ得ない。
嬉しみという一言が最適な表現の手前の新たな歳の初日。俺は周囲の人間にまこと恵まれていると実感させて頂ける感謝の日。
_07/21
いつ制定されたか全然うろおぼえの祝日が重なり連休と相成る今週中盤以降。手前の生業とはあまり関係ないなとか思いながらコーヒーをすすってライター案件をひとつやる。
ちょっと手を痛めたこともあるので、大事をとって楽器演奏などはほどほどにするべきと判断した半休のような日。蝉の声すら聴こえてこない、のどかで、たいへん静かな1日。キンキンに冷やしたハイネケンビールでも呑んで健やかに眠ろう。
_07/22
ハイネケンの空き瓶で植物たちに水と愛を注ぐ起きがけ、スマホの通知をチェックすると見知らぬ番号からの不在着信が。
近隣の宅電と思わしきその番号でコールバックすると受電したのは「隊長」と名乗る男であった。
こわいなおい、と思いながら話していたがすぐに何の件かは察しがついた。数日前の日記で詳細を伏せた件についてであった。
その日、メンタルクリニック帰りの俺は、ふと別の道から遠回りして帰ろうと思って振り返って5秒ほど歩くと人が公道に倒れ込んでいるのを目視。
遠目からでもヤバさが伝わってきたので俺はダッシュで近づき、秒で「これは俺にはどうにもならん」と思い、119番通報したのである。
その時、救急隊が駆けつけるまでの間、場所や容態や現在の応急処置状態を実況する役割を俺は担っていた。
倒れていた方は運ばれ、最後に「副隊長」と呼ばれていた方から「後日、連絡を――」的なやりとりがあったわけである。
今日の入電は、その件について隊長からの「大事には至らなかった」という内容であった。要は、倒れていた方は助かったのでよかったという話しである。
隊長曰く、なんでも、その場に居て応急処置をした者や、第一通報者である俺は連携という形らしく、表彰に値するとのことである。
「いや、俺、電話しただけっすよ?」と、当日も副隊長に伝えたが、「勇気ある行動をありがとうございます!」という熱気に押され、俺は応じさせて頂くことを伝えた。来月某日に、消防署で場を設けるとのことなのでスケジュールを聞かれ、手前の都合のよい日を伝える。
そういったわけで、人命に関わることであった出来事が「大丈夫」と知り、よかったよかったと安堵。本当に電話で実況しただけなのだが、感謝されることを拒む理由はないなとか思いながら日中は原稿をゴリゴリと書く。
そして、いつもは平日やっていたから次は土日や祝日、あるいはその前夜に、と思っていたツイキャス配信の告知をTwitterに上げる。
しかし、本日はオリンピック開会式という世界的なイベントと丸かぶりの時間帯で告知したことを寸前に気づき悶絶。
とはいえ、ありがたくも観てくださる方々がおられ、たいへんほっこりした気分に包まれる。日が過ぎても、手前のバースデーを祝うお言葉なども頂き、とても幸せな気持ちになる。
そういった、わりとインパクトのあったような1日。心を静めるチルい酒でも呑んでぐっすり寝よう。今日もハイネケンにしようか。この間もそうだったのだが、ハイネケンを呑むといいことがあるという不思議なジンクス。因果関係は、謎。
_07/23
明確に欲しい機材があり、店頭で売っていないかなと楽器屋巡りの旅に出る。池袋から御茶ノ水まで周ること計5店舗。結論、どこにも売っていなかった。
目当ての品は、ギターを「ギャーン」という音色に歪ませる「オーバードライブ」という種類のエフェクターである。今使用しているのでもこと足りるのだが、以前、知人に貸してもらって何度か弾いて「これは間違いない」と、感動すらおぼえた品がある。そいつが欲しい。
「欲しい」というか「必要」というレベルにいっていることをようやく自覚したので足を運んだわけだがどこにもない。
最後に行った店で、明らかに暇そうに鍵盤をちょいちょい叩いては「ポロン……」と音を鳴らしている店員さんを捕まえ、事情を説明する。
話しているうちに「この人は相当詳しい。出来る漢だ」と判断できたので、「店頭にはありませんか……では、それに近いやつありますか?」と聞くと6つの品を提案してきた。
俺は、自分がいつも使用している品も比較対象として出してもらい、計7つのエフェクターを弾き比べた。半分は好みではない。2つは及第点以上。1つは相当近い。そして、狙っているやつより1万円は安いときた。
操作性は抜群。音色もなかなかよい。「ゲート」という、弾いている時以外はノイズをカットする機能のおまけつきである。しかし、俺が狙っている品を弾いた時の「感動」だけが無かった。
「店員さんすみません。けっこうな時間試奏させて頂いて」
「いいえいいえ。どうです?」
「どれも悪くない、いや、いいですね。特に、お兄さんが最後に出してくれたこの珍しいやつは狙っている品に最も近いです」
「これ、いいんですよ」
「しかし……個人的なアレで恐縮ですが、『感動』だけが無いんです」
「じゃあ、これらは買ってはダメです! そのお目当のを探して買ってください! 浮気しちゃあダメですよ!」
と、店員さんは笑顔で強調した。押せば売れるだろうというタイミングでこの店員らしからぬ発言。齢は30前後といったところだろうか。実に感銘を受けた。「本当に欲しい物を買うべきである」という彼の思想が一発で伝わってきた。
「ですよね。決意できました」
「結局そういう時って、絶対また買い直しちゃうもんですよ。その、お客さんが狙っている品、すっげえいいですもん(笑)」
「やはりそうですよね。ぶはは」
「はははは」
ということで何も買わず帰宅。時間の無駄だったのだろうか。
こと、音楽機材に関しては、「今後絶対に安物は買わない」「一生物と判断した場合は経済的に買える状態だったら買って、その品を使用してまた稼ぐべきである」というアティテュード。これを去年から貫いているわけである。その結果、いまのところいい方向に作用しているのをとても実感している。
そこがグラつくところをあの店員さんは「ダメです!」と、明言してくれた。実に気持ちがよかった。
買い物に来た客に「妥協するくらいなら買うな!」と、ハッキリ言い放つあのスタンス。売り上げどうこうよりも、ああいった、ことの本質を大切にする人間というのはカッコいい。
ネットで探したら「在庫あり」のサイトを見つけたので即購入。最初からこうすればよかったのかもしれない。
いや、足を運んで、色々ためして、「本当に欲しい物を買うべきである」という大事な思いを再認識させられ、さらにブーストしてくれた出会い。ああいった好漢とコミュニケーションがとれたという体験は非常に大切だということで手打ち。
_07/24
数々の悪行が飼い主にバレてしまい、とうとう首輪を外されて野に放たれた近所の飼いネコ。昨夜、何事もなかったかのように首輪と鈴を付けた姿でチリンと寄ってくる。
どうやら俺の取り越し苦労だったようであった。よい毛艶を保つ茶トラを見て、わりと本気で安心し、適当にモフッて酒呑んで漫画読んで寝た。熟睡できたのかわからないが4時間で目が醒めたのでそのまま1日を過ごす。
ほぼほぼDAWに張り付いて制作をするが、ギター1トラックしかできなかったという進捗にむずがゆさをおぼえる。
そんな日もあると、焦って惰性みたいなトラックを重ねるよりじっくりいいのを作ったほうがいい、なにぶん、今月中でもいいと言われた案件なのでクオリティを重視する。というかちゃんと寝ていたら仕上がったのかもしれない気もしないでもない。
世間のニュースに目をやると、なんでも台風が近づいてきているらしい。数日後のリハの日に直撃したらたまったものではない。ありえない進路で逆走してほしい。なんなら一気に蒸発してほしい。
「台風XX号は温帯低気圧に変化、というか蒸発しました。明日はおおむね晴れです。お洗濯日和です!」という天気予報の文言を一度でいいから聞いてみたいものである。
_07/25
宅のフェンダージャガーカスタムという付き合いの長いギターのリペアお迎えに都内某所へ。
ついでに先日急にこわれた、足元で操作する、空間をグニャリと揺らす系のエフェクターのトレモロというお気に入りのビンテージ機材も直してもらおうと持参。
到着し、「この間はストラトキャスターがお世話になりました! ジャガーのほうはいかがでしょうか!」と、元気よく尋ねる。職人肌的なリペアマンの方にはなんとなく、これくらいのテンションが喜ばれると思った所以である。
「……できてるよ。ガッタガタだったよ(笑)」と、言われリフレッシュしたジャガーを迎える。「は! ありがとうございます!」と、明瞭な発声で謝辞を述べる。
「それでですね! このトレモロなのですが、急にスイッチに不具合が起きまして!」
「どれ……」
「たいへんお気に入りの機材でございまして! 直りますでしょうか!」
「ああ……まあでも、すぐってわけにはいかねえけどよ……!」
「ですよね! しかし、数日後のリハには必ず足元にあってほしいくらいの愛用の機材でございまして……!」
と、遠回しに「今日中に直してください」的なオーラをバキバキに出しつつおねだりをすると、彼の手元はもうプロの技を見せていた。ドキドキしながら待ちつつ尋ねる。
「スイッチ、やはり故障してますでしょうか……」
「うん。完全に破壊されているなこれは」
「まじですか! クソ! 雑に踏みすぎたか……!」
「まあ、でも……」
「すいません。お忙しいところ……」
そして、エフェクター図鑑を読みながら待つところ約15分。トレモロさんも完全回復を見せた。プロのリペアマンのスピーディーな仕事に感銘を受けまくる。
「お忙しいところありがとうございます!」と、元気よくお礼を述べ、清算をして「あと、音が出なくなってしまったコンプレッサーがあるのですがそれも直せますでしょうか!」と聞くと、「うん。持ってきてみな」という心強いお言葉を賜る。
そういったわけでたいへん気持ち良い気分で帰宅。さっそく宅のいかついアンプでジャガーを鳴らすとめちゃめちゃ仕上がっているサウンドを出力。誠に清々しい気分で楽器練習や原稿書きを進め深夜。
なにかとリフレッシュした良日。台風が近づき、天候もまたリフレッシュへと向かうと思わしき7月も終盤。
_07/26
台風はわりとトリッキーなムーブで進行したので天候荒れず。やれやれと思いネギウドンを煮て食う昼。なかなか涼しめの、「幼少期の頃は夏はこれくらいだったな」と、1980年代を回顧する。実に過ごしやすい夏の空気。
そういえば先月試験を受けた資格試験は無事合格し、なんだか立派な表彰状サイズの証明書とカード型の認定証が届いている。一応、これで手前は心理カウンセラーと謳ってもよいということに相成る。
ストレートにそういった生業をするという目的ではないが、そこに付随した業務をちょっとずつ走らせたいという展望のいくつかのフェーズに対してひとつ「よし」となった感じである。
とはいえ、ありがたいことに、その新たな展望以外でもやることをたくさん頂いているので、今日もそれらをせっせと元気にはりきってやる。
今日あたりはコロナ禍史上マックスの感染者数を記録したという。先行きは不透明。世間や医療関係の方々への心配はもちろんあると言ったらおこがましいだろうか。そして、手前の心配。
案件はコロナ禍以前に比べると少ない。しかし、連日やることはわりとある。資金は、派手に減らず派手に増えず、といった現実。ということは、コロナ禍なりにまあまあやれているのだろうと、いまやるべきことに尽力。
今日あたり接近した台風の進路くらいのトリッキーな立ち回りの方が、もしかしたら適応できるのかもしれん時代なのかなとも少々感じる。誰も正解がわからないような空気が続く表現しがたい不思議な時代。
_07/27
快適な目覚めと蒸し暑き夏空。興行リハーサルで都内某所へ。みなさまと集ってにこやかな雰囲気の中スタジオイン。
メンバーの一人が「遅くなりましたが」と、手前にバースデープレゼントを手渡してくれる。彼がチョイスしてくれた俺の好みの品を目視し狂喜。そして乱舞。たいへんありがたいことである。
セットリストの密度所以もあり、みなさまとたっぷり練習する。心地よい時間を過ごし、帰りはメンバー数人とメシを食いに肉や寿司や野菜と取り放題の店舗へ行きゆったりする(おごってもらう)。
帰宅し、YouTubeでラファエルさんチャンネルなどを観て休憩していたら食いすぎで眠くなってきたのでソファで一休みする。
ふと、きっと人生の中間地点であろう手前の年齢を鑑み、「20年前の今頃は何をしていたっけ」と、昔の記憶を辿る。
その頃の日常といったら、今の住処から徒歩数分で着く「赤羽パーラー新世紀」という今は亡きパチンコ店でアルバイトをしていた頃。髪型は、なぜか長髪オールバックがデフォルトだった。無意味にイキッていた。
バンド活動やギャンブル行為にいそしみつつ、勤め先では蝶ネクタイ姿で「XX番台にお座りのお客さまぁ! 確率変動スタートォォ!!」などと、マイクで叫んではわりと真面目に働いていた。
それから20年後、一応博打からは足を洗い、バンドというかたちではない音楽のやりかたを進めながら、こうして日々暮らしているという未来を描いていたっけかと思うと当時は本当に何も考えていなかった気がする。
20年前から現在まで、実に様々な、カラフルな、幸せなことも絶望的なこともグロテスクなこともクソみたいなこともエロいことも、虚無感も幸福感も挫折感も味わった。厭世観も楽天観もいつだって両極端に揺れ動いていた。
要するに、20年という期間はあまりにもたくさんの経験と数えきれない情念が湧いてはクルクルと回っていた。
そう考えると、初老を迎えるまでのあと20年間、いくらでもやれることをする時間はふんだんにあるなと、なんだか前向きになってくる。しかし、お腹いっぱいなので寝る。1時間で起きて原稿をやる。
これからやれることはたくさんあるなと、改めて認識しつつ、目の前にあることを進める。それをやらずに逆走していた時期もあったが、「それありきの今」という、よくある自己肯定をしつつ今日も酒を呑んで寝るだろう。
「40歳前後」といったら、20年前の感覚では「もうある程度、先が見えて、なんだか色々くたびれはじめる頃」というものだったが、実際その時期が来たら全然そうではなかったという実感はきっと良質なものであろう。
あと20年、さらにもう20年、いけるならば、面白おかしくクルクルと回って生きて楽しく過ごしたい。こういったフワッとした感覚だけは20年前と変わっていない。さすがにそろそろ是正すべきだろうか。
_07/28
起きて少しデスクワークをする。そして案件で渋谷へ。帰宅して原稿を書く。楽器練習を数時間して日が閉じる。
日記ってまとめれば2行で終わるなとか思うのだが、今日は渋谷に行って、案件とは全く無関係のことで、別に悪いことでもないし、事故とかそういう類のことではないのであろうが、とても考えさせられることがあった。
考えても考えても、答えは出てこなかったし、「そういうことか」と、スッキリした心境になれるような感じでもなかった。
こういう時、明確に、「それは、こういうことだよ。こう受け止めればいいんだよ」という人やら、なにかしらがあると、楽チンである。
しかし、個人的には、それはあまり好きではないので、考えまくった挙げ句、「もう少し考え続けよう」と、フニャフニャになるほどに考えさせられることがあった1日。もっとポップに日々生きようぜとも思った1日。ギネスビールでも呑んで頭をやわっこくさせて寝よう。
_07/29
今日明日で提出させるべき案件が3つある。いけるのか、いけるのかこれはと思いつつ、一つクリア。昨夜のレポート原稿を書き上げて提出した夕方。
やれやれと思い、時間的になかなか難しくなってきた「外食」がしたいと思い、行きつけのラーメン屋へ。赤羽で最も懇意にしている「らーめん粋」へ。
お気に入りのたまごラーメンにワカメをトッピングするという贅の限りを尽くし(会計650円)帰宅。インタビュー原稿の文字起こしをする。これも数時間かけてやりおおし提出。2つクリア。
よし、峠は越えたのかもしれんとは思いつつも、明後日の興行の練習をと、もっとクオリティ的に仕上げたいと思い、まあまあでかいエフェクターボードを寝室から引っ張り出して仕事部屋に広げ、ガチャガチャと踏みながらライブスタイルで練習すること数時間。
「あとは明日、最終仕上げでいけるぜ」という温まり具合までもっていく。明日までの案件がもう一つ。しかし既に深夜。寝ずにやる。これは俺的には愚行。質も効率も高まるとは思えない。徹夜で何かを仕上げることができるタイプのすごい人を羨みつつ今日は締める。
空くときは不安になるくらい空くが、そうでないときはネコの手をいくつか借りたいとおもうほど、いい意味で滞留する。それが案件というものなのだろうか。求められているうちが華。依頼をしてくれる方々への感謝の念はいつだって禁じ得ない。
_07/30
あっという間に7月も締まったなとか思いながら掃除機をゴウゴウとかける。そしてマイタケ豆腐スープをつくってカッパ巻きと一緒に食らう。
明日は興行だから手を痛めんようにと、ギターの練習は長時間せず、仕上げという感じで確認をする。全力は尽くした、と思い、DAWを開いて制作をする。
今月を振り返ると、やはり先月同様、恐ろしいまでの頻度でギターを弾いていた。弾く必要がある案件や興行があるのだからそれは必然なのだが、こういった感じがずっと続けばよいなと、改めてギターキッズの頃の熱量が再燃する。
「とにかくずっとやっていれば、よかれと思う方向に行く」と、誰だったかが言っていた。それは真理なのだろうと思う。
今日あたりは酒はライトに、早めにベッドにつこうと思う。真夏ではあるが、幸い宅の寝室は窓がないのに夏は涼しく、冬は暖かいという謎かつ良質な環境。質のよい睡眠に耽って明日に備えよう。
_07/31