ここだけ毎日更新。ツイートばりの短文日記。
よく団地の散歩をする。11月。
精神科医と初めてお話をする小一時間。私が診察を受けた訳ではない。「精神疾患や人格障害の類いは、治るものではない」という意見は、その同じ歳くらいの精神科医と一致した。精神科医の先生が一番言っちゃいけないことな気もするが。
あと、先生の物腰や話し方を観察していたが、ちょっとサイコっぽかった。ラーメン食って帰ってちょっと原稿書いてのんびりする本来お休みの日。
_11/01
赤羽の純喫茶「デア」でカタカタと過ごす。この店はどうやらエレカシ宮本浩次さんがよく通っていた店らしく、サインや写真が奉ってある。この喫茶店のソファはフッカフカで実にケツに優しい。
赤羽台の入り口の坂も確かエレカシの聖地なので、くだらねえとつぶやいて冷めた面して歩く。と、ずっと歌いながら向かう。赤羽という地は何故か奇人が非常に多いので、まあまあの声量で歌いながら歩いていてもむしろ自然。赤羽公園でオリジナル礼拝をしながらラリっている男性を見かけたが、ごく日常風景である。
聖地で何枚か写真を撮っていたら坂の上にはけっこうなの規模の団地があることを思い出す。
三十路を過ぎたあたりから団地マニアデビューした俺の団地欲が自然に震ってきたので赤羽台団地を散歩する。44号棟〜49号棟の佇まいと形が本当にたまらない。共感できる同志が居ないのが非常に残念だが、建物の側面に打たれた号棟数字のフォントもたまらない。
ゾッとする感覚とワクワクする感覚と懐かしい間隔が混じった、説明の出来ない満たされる感覚。無機質で、連続性を持ち、どこか冷ややかな建物と汎用性に欠けたフォントで乱暴に打たれた数字を見て何が面白いのか。前世で何かあったのかなど、そういった理由しか思いつかない。何となく好きなことというのは、案外全てそうなのかもしれんと考えると、生きるのがスムーズになる気がする。
_11/02
東京を南へ南へ、祝日で賑わいを見せる台場へ向かい轟音のライブを観る。何だか今日は一日を通して覇気がなかったので、帰り中華屋で気つけに定食とラーメンを一気に食べるという暴挙に出る。
近くのテーブルのおばちゃんが「あんなに痩せてるのに食べられるのかしら?」という目で僕を見ていたのを確かに確認した。僕だって食う時は食うんだぜおばちゃん。
案外普通に食べられたどころか、餃子をもう1皿くらい食いたいというくらいの心境だったため、食欲が旺盛ならまあ良しとしようと思う。
帰って原稿を書いて、別件で到着したヘヴィロックを聴く。イイ。コリコリと事務作業もしていると、だんだんと覇気が湧いてくる。ただただ、仕事じゃなくて遊びたいなと思っていただけと判断する。怠けたいなと思う日があってもいいと思う。そういう時は、おばちゃんが心配するくらいメシ食べてちゃんと仕事すれば治るそうな。
_11/03
どうにも遊びほうけていたい欲が止めどなく朝から溢れるも真面目に仕事に精を出す。 真面目である。昼めしにイワシ3匹定食をバキバキと食べる。定食のチョイスすらどこか真面目である。真面目がどういう概念かいまいちピシャリと説明できないが、きっとひたむきにコツコツ、といったところであろう。どちらかと言えば概念としては見上げたものある。よし、真面目に酒呑んで寝よう。2合。
_11/04
特に思い当たるフシもなく超熟睡する。イワシ定食を頭ごと食べたのが良かったのだろうか。デスクワーク中心に原稿を書いたりして過ごす秋の快晴日。久々にThe Clashの『London Calling』を聴くが、パンクだけどパンクでない爽やかな音像で気持ちいい。
やっぱり改めていいアルバムだなと感じると共に、前回にこのアルバムを聴いた時期が記憶からよみがえる。たしか、30歳の頃の、新宿御苑の周りを車で走りながらの秋の快晴日だった。鮮明に蘇る。音楽はこういうとこ不思議だ。
_11/05
赤羽の喫茶店「友路有」でカタカタと過ごす。昨夜呑んだボンベイサファイア・ジンがこんなに旨かったかと思い進んだが、まあまあの二日酔いに。100mlくらいしか呑んでいないが効く酒は本当に効く。よくボトルを見てみるとアルコール度数47%と表示してあった。ほぼ半分がアルコールとは、よくよく考えると恐ろしい飲み物だ。
_11/06
三食食べて朝から夜までまんべんなく仕事をするという素晴らしく普通の日。夕方気つけにレッドブルと胃薬を飲んだからか夜中まで活力がみなぎる。勧めてもほとんどの人はやらないだろうが、レッドブルと大田胃散の組合わせはびっくりするほど美味い。イエーガーマイスターというリキュールにそっくりの味になる。
_11/07
超久しぶりに風邪をひいた気配を感じる。ここ半年か1年か、ちょっとした気休めに市販のビタミンC錠剤「クニキチ」を3粒づつ飲んでいて、日々なかなか艶やかに調子が良いため、一生風邪はひかんと思っていたが当然そんなことはなかった。
_11/08
体調などすぐに良くなったのでグレゴリオ聖歌などをiPodで聴きながら移動する。だいたい1オクターブ以下で構成されているメロディがシンプルでいいっちゃ良い。原稿を書いたりフォーキーな歌謡曲をアナライズしたりして過ごす。
昨今、隣人の謎国人の喋り声がだいたいやかましいが、だんだん気にならなくなってきた。しかし、機材を置きにきた音にはうるさい友人が「お隣さんうるさいね?」と言うからやっぱうるさいのだろう。俺宅もまあまあ音を出しているし、お互い様だから良い。
_11/09
昼イチでギターレッスンに行く。そして終わったあと赤羽の純喫茶「デア」にまた行く。エビピラフやらを食いながら仕事をして過ごす。ある程度の長居に許可を得るようにとオーダーしたエビピラフは思いのほか美味かったそうな。あとは革靴のクリームとかカラアゲとか買って帰る。日常という感じの日常感が心地良い日。
_11/10
担当の村上氏がおこなったSUGIZOさんのインタビュー音声をおこしていたら、もの凄い紳士な方で驚く。
SUGIZOさんは、30代後半、40歳くらいから50歳くらいが最もエネルギッシュで、人生のピークだと説いていたので、そのくだりにどうも勇気づけられる。話し方が書き言葉のような方は、賢人という感じがするので見習いたい。
_11/11
これからどうエネルギッシュに生きるか考える。とりあえず今はエネルギッシュかどうかというと、20代の頃よりもむしろ活動的な気がしてならない。
やらなくてもいいことに固執していたのが20代の頃で、やるべきと信じたことに固執しているのが30代で、どうもその違いは大きい気がしてきた。
今日書いたこの文を20代の頃の手前に読ませてやりたいが、読ませたところで鼻で笑って10年後のことすら考えないだろうと思う。
現に今から10年後にこの頃の雑文を読んだら、やらなくても、やるべきことでもない、俺は一体何に固執していたんだと、鼻で笑えたら何かしら正解な気もする。
_11/12
丸一日宅で仕事をする。原稿書きや音源アップロード作業で一日が過ぎる。今日は宅周辺をうろつくノラネコとしか喋っていない。こいつとはだいぶ仲良くなった。声をかけるとガンガン脚に当たってくる。コンビニまで行く道中「行くぞ」と言ったら100mくらいついてきた。
そいつは途中ではち合わせたウシ柄ネコに「シャー」とコンタクトし、そこで途切れた。ネコはネコ同士コミュニケーションとるのが一番幸せなはず。人もそうであるはずだが、対人の情報量が膨大な昨今、全くもって独りというのも贅沢な日だとしみじみ思った秋も終盤。
_11/13
今日も一日宅で仕事をする。ちょっとたて込んできた気がするのでシャキシャキとやる。昨日今日とコーヒーが死ぬ程美味く淹れられるのだが、これはとうとう解脱したのだろうか。
原稿を書き、サイトを更新し、資料などを作り、今日も会ったネコをいじり、ラーメンを食って過ごす雨で湿った平日。
_11/14
立て込んできたなりにシャキリと仕事をしていると、ぶり返した風邪気味はピシャリと治る。2日かけて長ネギと生姜を致死量寸前まで食べたのが功を成したとみた。
Aphex twinの『CHEETAH』を聴いていると、僕もマニアックなアナログシンセが欲しいと思う。あと、急に車も欲しくなってくる。20歳の時に本気で買おうと思っていた「シルビアS13」が欲しいが、もはや旧車のS13を街中で乗るときっと走り屋だとか思われかねん。しかしそれはそれで若干憧れる。
アナログシンセサウンドが効いたテクノを聴きながら、景気良く首都高から神奈川あたりまで安全運転でシルビアを走らせて、そのまま九州あたりまで行ってしまい、ついでに池島のレトロな団地群を観に島へ入り、その荒廃美に魅せられ、そのまま帰ってきたくない欲。だがしかしきっと皆で忙しい年末はすぐそこ。
_11/15
明日の取材案件の資料などを作りつつ過ごす。最近メシを多めに食べるのでなかなかの覇気に満ちる。
今年は何だか各種資料作りの機会がたいへん多く、いつもはフリーソフトのOpen officeなどを使っているのだが、エクセルやパワポがちょっと欲しいと思いつつ新しいPCも欲しいなと思う。
覇気があると食欲・性欲・物欲がみなぎり、すこぶる俗物な気分になるが、そうでもないと非生産的な破滅願望に苛まれることもあるのが人間の仕様につき、達観した崇高な無欲生物より、俗物の方が楽しいのだろうかと考え、結局俺はもっと現金が欲しいのかと思う。
そりゃ欲しいが、現金では得られないことに対して時間を費やすこともなかなか多かったここ数カ月、数年は、バランスが良いといえば良い。
_11/16
この上ない晴天の中、早々に取材が済んだので表参道のメシ屋で赤いスパゲッティを食う。ついでに界隈を小一時間散歩し、クソ高価そうな服屋でスーツなどを見る。
なんとなく今なら買える気がしてくるが高価いので買わんかった。こいつはクールだと思ったイタリア製のローファーの革靴は10万円だった。履きたいが高価い。クソ高価いスーツと革靴がちょっと欲しい。
気が済んだので赤羽に戻り、純喫茶「デア」で原稿やらをやる。「コーヒー、ミルクは…ブラックでしたっけ?」と、短期間に3回来たので、ママさんは覚えてくれたようだ。
どういう訳かこの店は波長が合うというか、凄く仕事をするに居心地が良いので足繁く通う。コーヒーとチーズサンドで3時間も居て申し訳ないかなとも思う。また来よう。
_11/17
足早に進む冬の乾いた空気の中、せっせと仕事をし、温かく冬が越せるように蓄える。寒いので酒とローストビーフの塊を買って凌ぐ。300円のローストビーフの塊は逆に怖い。肉は肉な訳だしきっと旨かろう。
11/18
盃を交わし、血縁ではない者同士が縁を結ぶというのは、アウトローな方々の行為だが、何となくけっこう素敵なことだなとか、ふと考えながら仕事に励む。
そういった種類の信頼関係上下関係に恵まれなかったのか、自ら敬遠しているのか、ぼやぼや考えながら赤羽の雀荘で3時間ほど夜更けに遊ぶ。
最近、人間関係についてよく考える。人間が何を求めているのかというと、結局、人間は人間を求めているという考えに至るのだが、たまに独りを欲する人間がいる。
それは、独りで創り上げる必要のある世界を持っている者、もしくは人生の初期に「人間は怖い」という意識を心身的に「これでもか」と残酷に植え付けられた者だと思う。
そうでない者は、家庭という世界をうまく作ってうまい具合に人と人のリレーションシップを自然に繋ぐ。
そうでない人は、どこか不自然な物腰、所作、言動、思想を持っている。ただ喋っているだけでどこか不自然な人間。
そういった者は、人間関係について、自然ではないが、何と言うか自然には知り得ない真理をあらかじめ知っている。
だけど、知り得ない真理やらを重要視しない方が、人間関係というものは上手くいく気がするとか考えながら、色んな人と接すると、とてつもないハッピーな孤独感と厭世観を味わえるのでいささか良くない。気がする。
_11/19
レッスンに行って喫茶店に行ってとよくある日だったが、ガソリンを入れ忘れたり時間の感覚が微妙におかしかったりと、若干の違和感が夜まであった。
理由は、起きがけに残っていることを実感していたから間違いないが、昨夜ベンゾジアゼピン系の緩和剤を酒と一緒に飲んだ為。
この組み合わせはよかならぬ効き方がすると中島らもさんの本にも書いてあったのに忘れていた。そもそも薬と酒は基本的に一緒に飲んではいけないという大前提。
_11/20
せっせとギターの稽古にはげむレッスン。昼いっぱいくらいはそうして過ごす。たまにはと思い買ったエスプレッソ系のコーヒーを淹れ、生徒さんと一緒に飲む。うまい。
昨夜父親が夢に出てきて訳のわからないことを言っていたのを思い出し、夜、病院に面会へでも行こうと原チャリで環状七号線を意気揚々とかっ飛ばしていたら止まる。昨日ガソリンを入れ忘れたままだったことすら忘れていてガス欠で止まる。高校生以来の失態である。幸い目的地の100m付近だったので良かったがあの脱力感といったら。
病室で30分くらい世間話をして過ごすが、相変わらず訳のわからないことを真面目に話していてもはや逆にウケる。脳細胞が再生し、精神回路がある程度正常に戻る薬はどこにあるのだろう。あったら2万円まで出す。
_11/21
仕事して蕎麦を食べて楽器の練習などもして、コーヒーを飲んで煙草を吸い、俺もそろそろ平均的に考えて残り何年生きられるのだろうとか考えると、いつもやっていることは貴重なもんだと、老人のような心境になる。
10代20代30代くらいの人欲はただの性欲あたりに近い気がするが、老人の人欲は死にたくない欲に近い気がする。
そういった死生観に耽っても別に面白くはないので、とにかくエロいことを考えようと真面目に思った。思いつく限りのエロいことを、だ。
そうなってくると、肉々しいプレイや性をおもちゃにして異性を弄ぶようなよピンクで卑猥な遊びなどではなく、何故かやはり死生観の話になってくる。
倒錯したエロとは何ぞと考え、昔さんざん調べ上げたアブノーマルな性癖の持ち主たちの特性について思い出す。やはりエロは死に対する何かな気がする。もっとこう、わかりやすいエロに真摯であるべきだと思った。
_11/22
何が原因かわからないがハラをこわしたので大人しく過ごす。酒も呑まずに炭酸水を飲んで寝ようと思う。酒を呑まないでいると深夜やけに頭がクリアなのが子供の頃からどうも解消しない。しかしベッドに入って来世のことなど考えているとすぐ眠れるので不眠症ではない。これで不眠症だったら間違いなくアル中になる。グゥゥ。
_11/23
今日はaikoの歌を20曲くらい聴いて過ごす。こうなってくるともう頭の中はaikoでいっぱいである。めしを買いにコンビニへ行くもaikoが「あぁ〜」とずっと歌っている。
aikoを聴くのを一旦やめて箸休めに東京ダイナマイトのコントを動画を観るが、どうもハチミツ二郎らに全然集中できず。再びaikoばかりを動画で観る。今まで年下と思っていたが違い、驚く。だんだんaikoが好きになってくる。
そのあとスティーヴィーワンダーを聴いてたら、aikoの曲をスティーヴィーが歌うと意外にハマるメロディラインであることを発見したが、何となくそれは原稿には書かなかった。「テトラポット登おってえ♪」のあたりとかスティーヴィーっぽいのだが。他にもたくさんあったが、共感できる人は居なかろうと。
_11/24
寝不足の恐ろしさ。最近はつとめて8時間は寝ることを心掛けてはや数カ月、たいへん覇気にあふれる楽しい毎日である。しかし今日は6時間だかそれ未満だかという寝不足でフル稼働をする。
6時間も寝れば十分、寝不足というには甘いんだよ、という方は多くおられる。が、自分にとっては断じて寝不足。普通に過ごせるが、明らかにパフォーマンス力は半分くらいで、煙草も味気ない。
嗜好品が大して美味く感じないなら死のうか。という鬱の淵すらちょびっと見える。寝不足は恐ろしい。お腹も何だかゴロゴロと元気がない。という訳でさっさと寝よう。十分な睡眠をとって、たのしげな覇気さえあれば何でもできる気がする。
_11/25
ダラダラと机で過ごしていたら朝がくる。さすがにそこから酒を呑む気にもならないので柿ピーでも食って寝る。ここ1年くらい、わさび柿ピーの6袋パックが常にある。
_11/26
埼玉県川口駅周辺を散歩したり原稿をやったりして静かに過ごす。明日は健康診断の日なので酒は呑めないわ夜なんも食えないわでションボリと過ごす。
しかし2日も呑まずに過ごしているからか、頭が若干澄んでいる気がする。やはりアルコールはほどほどが良いそうな。
_11/27
血は抜かれるわバリウムは飲まされるわという健康診断の日。俺は健康について考えた。とりあえず3日もいっさい酒を呑まないといつもより調子が良い。煙草を5、6本に留めるとやはり調子が良い気がする。
健康についてというより、不健康なものを何故に毎日摂っているのか。手軽に気持ち良くなれるからの一点である。楽がしたいという堕落した欲求の象徴だ。ここにきて酒と煙草を両方ヤメてやろうかという案も出てくる。
しかし、しかし、と、あらゆる発想で堕落の象徴を擁護する言葉が出てくる。だが、とりあえず毎日酒をダラダラ呑むのをちょっとヤメるのは、すこぶる良い気分なのでちょいちょいヤメようと思う。というか、たまに呑めば良い。ああ難しい。酒と煙草。
_11/28
酒や煙草について考えていた昨今、知人が「アイコス」をくれた。くれるのか。こいつは、蒸気を利用した現代のキセルである。もちろんありがたく頂戴する。
宅の机で仕事をするときはバンバン煙草を吸い、換気対策はしつつも現代的にどうもいかんなと思っていた矢先、とても助かる。こいつは煙が非常に少ないやつだ。しかしそれにしても俺も知人もその周りのスモーカーたちも、何故禁煙という発想がないのだろうか。
_11/29
気が付けば明日は12月。早いといえばそうだが、今年の春あたりを思い出すと3年くらい前にも感じる。俺はこの1年、一体何をやっていたのだと早々と振り返ると、案外転機的なことが1つ2つあった。
具体的なことは置いておいて、俺がこの1年で最も実感したことは、超基本的なことだった。“みんなは何欲が強くて、何を求めて生きているか”ということ、それがチカッと理解できたということだ。
そして、自分はその欲が人よりもだいぶ少ないということだ。確かそれは「人欲」だ。結局人は人を求めているという超基本的なことをようやく実感した年だった。
それでもって、各種中毒者に依存体質の者。アル中やギャンブル依存症、薬物中毒のジャンキーなんかは、依存する対象を人と置き換えているだけだという恐ろしい事実にもうっすら気付いて絶望的に納得した。確かに僕も、夜一緒に過ごす人がいたとしたら酒なんてどうでもいい。あらゆる種類の対人関係のどれかで被爆あるいは自爆した経験のない者の人欲は正常だ。
人は結局いちばん人を求めていること、そこにどのタイミングで気付いたかというと3月。近くの広い公園。自称90歳という家族にも医者にも見放されたっぽい老人がいた。妙にはっきりと会話をする老人だった。僕は直感で「こいつはもう数日で死ぬのかな」と思った。
そして、何となしに世間話のシメに握手をしたら、その90歳は「幸せだぁ…」と神と俗物を足して畜生で割ったような表情で笑い、なかなか俺の手を離さなかった。俺はそのどうでもいい体験が芯に染み付き、インターバルを置きながら様々な機会で考えた結果、先の結論に至らざるをえなかった。
よく考えてみると、自分だっていちばん元気になるタイミングといったら人と接するときだ。それを今まで知らなかったというだけで、きっと俺は人欲が少ない訳ではないと思った。これは、少なくとも小学生の頃に気付くべきである。
_11/30